「毎日なんだか息苦しいな」「生きづらい人生だなぁ」と感じていたり、何かのプレッシャーがあなたを縛っているなら、他のことに熱中したり、ぐうたらするのがいいと思います。精神科医の藤野智哉氏が、日常で簡単に実践できる「心がふっと軽くなる」コツを教えてくれました。もっと自由気ままに日常生活を送りましょう!
本記事は、藤野智哉:著『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス:刊)より一部抜粋編集したものです。
自分が決めたルールに縛られてませんか?
あなたの部屋には消耗品のストックはどれくらいありますか?
トイレットペーパーに洗剤、シャンプーに洗顔フォームに化粧水、調味料もストックがあるという人も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で、マスクに加えてトイレットペーパーの買い占めが起こりました。「ダメだ」と禁止されればされるほど衝動を抑えにくくなる、誰かが買っているのではと焦って欲しくなる。我慢しなくてはと思うと、ますます買いたくなってしまう。
禁断の恋が盛り上がるのと同じですね。いわゆる「カリギュラ効果」といわれる現象ですが、それとはまったく別に、あなたの心を縛っていることがたくさんあります。
それは、何かをしようという能動的な行動ではなく「~しなくてはいけない」と思ってしまうこと。強迫観念のように、それに囚われてしまう人が本当に多いんですね。
そういうタイプの人は、ストックを溜め込んでしまいます。
あなたは、生活必需品を「在庫がなくなる前に買っておかなくては」という不安はありませんか。
防災上の観点から、ある程度のストックを自宅に用意することはいい、ということはわかっていますが、それとは別に、なくなることが不安で買いだめてしまうという人が意外と多いんです。
毎日決まった時間にご飯を作らなくてはいけない、というプレッシャーも同じです。作るのが大変だったら、惣菜を買ってきてもいいし、出前を頼んだっていいんです。
でも「ストックがなくなる前に買わないといけない」「ご飯を毎日作らないといけない」というのは、きっとあなたが決めたルールなんです。
世の中には、誰かが決めたルールがたくさんあります。
- ほこりがたまる前に掃除をする。
- 洗濯物はためない。
- 風呂のお湯は毎日入れる。
こういったルールが、あなたを苦しめていませんか。
部屋は週に1回掃除しなきゃいけないと、誰が決めたのでしょう? 洗濯機がパンパンになってから洗濯したほうが効率的では? 2日に1回シャワーを浴びるほうが経済的では?
母方の祖父が昔、トイレットペーパーをよく食卓で使っていました。幼少期の私は「トイレットペーパーはトイレで使うもの」という先入観があったから、なんとなく違和感がありました。
しかし、ひとり暮らしを始めた頃、気づくとティッシュが切れている、でも鼻はかみたいしどうしよう、と思ったときに、私はついに一線を越え、トイレットペーパーを食卓に導入しました。
いざ使ってみると、何かこぼしたときにも使えるし、とてもいいわけです。いかに自分で無駄にルールを作り、縛ってしまっているか実感しました。
ただ、トイレットペーパーで鼻をかみ続けると、皮がむけてくるのであまりおすすめはしませんが。
楽しいことに熱中してリセットしよう
発想を転換するだけで、あなたはずいぶんと楽になるはず。きっとこれはちょっとした、ぐうたらのすすめなんです。
ぐうたら、ぐうたら。
ぐうたらの語源は「愚か」で「たるんでいる」様子を表していたと言われていますが、とてもステキな言葉だと思いませんか。いつものんびりして、争いはせず、人のことは気にせず、いつもおっとり。
もしかすると、ぐうたらは悟りの境地なのかもしれません。
というのも、人間というのは、イヤなことは考えないようにしようと思った時点で考えてしまっている、というジレンマがあるんですね。蚊に刺されたら、かゆみのことばかり気になるのも同じです。
でも、他のことをしていると、あっという間にかゆさのことなんて忘れてしまう。人間の心なんて、意外と単純だったりするんだなって思うんです。
何かのプレッシャーがあなたを縛っているなら、他のことに熱中するのがいいと思います。好きなアイドルの舞台を見ているときに、トイレットペーパーの在庫のことなんて気にならないでしょう。
楽しいことだけ考えて、イヤなことは自然と忘れてしまうのがベスト。
ぐうたらと楽しいことを考えて、ギリギリでちょっと慌てて……それも人間らしくていいじゃないって思いませんか。