皆さんは「ミャンマー」という国を、どの程度知っていますか?

若い人だと、アイドルグループ『乃木坂46』のエースである齋藤飛鳥さんが、ミャンマーと日本のハーフなので、国名だけは耳馴染みがあるかもしれません。そして、40代以上の人には「ミャンマーの前身はビルマ」と言えば、ピンとくるのではないでしょうか。

国名に関しては、多くの日本人が知っている国ですが、では「どんな国なの?」と質問されたら、ほとんどの人が答えに窮するのではないかと思います。

そんなミャンマーで、5年前から事業を展開している坂上五郎氏に、日本人はあまり知らないミャンマーの市民生活を聞いてみました。

▲一般市民が生活するエリアの1枚。昭和の日本のような雰囲気が漂っている

軍事政権国家だが争いを好まない温厚な民族性

ミャンマーは現在、表向きは民主主義国家ということになっていますが、日本人が考えている民主主義とは少し違っています。かりそめの民主主義というか、軍が認める範囲の民主主義で、箱庭の中で軍監視のもとに民主主義が行われている、といった感じでしょうか。

2021年の初めに軍事クーデターが起きましたが、それまでも実質的には軍事政権国家だったのです。

軍事政権国家と聞くと、好戦的な民族なのかと思われるかもしれませんが、ミャンマー人はとにかく穏やかな性格で、喧嘩などもってのほか、人前で怒ったりすることもなく、いつもニコニコしています

女性も奥ゆかしい人が多くて、今も婚前交渉はほとんどしないそうです。結婚前に同棲するなんてことも聞いたことはありません。

▲ミャンマーの民族衣装ロンジー。男性もロングスカートのような履き物を着用するのが特徴的

そんな戦いを好まない民族性だからなのでしょうか、ミャンマーの人たちはスポーツにあまり興味を持っていません。

今年行われた東京オリンピックも、ほとんどの人が見てなかったと思います。「東京オリンピック、見た?」と聞くと「オリンピックってなに?」という答えが返ってくるくらいです。

ミャンマーで、誰もが知っているスポーツと言ったら「サッカー」くらいじゃないでしょうか。それくらい「戦い」というものには無縁なのです。

一方で、プライドが高くて、自分が悪いことをしても絶対に謝りません。

仕事でミスをしたことを人前で注意すると辞めてしまったりするので、社員の扱いは大変だったりします。

貧富の差は激しいが痩せ細っている人は少ない?

市民生活の水準は、はっきり言って貧しいです。そして、ものすごい格差社会。

首都ネピドーや大都市ヤンゴンなどには近代的な建物があって、栄えているように見えますが、それも半径5キロくらいで、少し離れると、それこそフィリピンのスラム街のような光景が広がっています。

富裕層は、イギリス統治時代の名残のあるヨーロッパ風建築の家屋に住んでいるのですが、一般市民はバラック小屋みたいなところにしか住めないのです。

▲ヤンゴン市内の線路沿いにある民家。トタンを組み合わせただけで、今にも崩れてしまいそう

また、インフラも整っていなくて、停電はしょっちゅう起こりますし、道も舗装されていますが、ちょっと郊外に行けば土の道ばかり。仮にセメントで舗装されていても、穴ぼこだらけだったりします。

ガスも各家庭でプロパンを購入しないといけないので、家で調理はほとんどしません。ですから、基本的に食事は屋台で買って食べているようです。

ミャンマー人も日本人と同様、主食はお米になります。ミャンマー人はとにかくお米が大好物。そして、それと同じくらい油で浸したお肉が大好きで、米と肉があれば他は何もいらない、というほどです。

肉を油に浸すのは、肉が腐らないようにするための工夫だったのですが、いつしかミャンマー人は、油のほうがすごく好きになったようで、とにかくなんでも油に浸します。

肉だけでなく、魚や海老などの魚介類も油に浸すので、何を食べても結局は同じ味に…。そんな無類の油好きゆえ、発展途上国の人々に見られる“がりがりに痩せ細った体”の人はほとんどいません。

肥満体の人も多く、高血圧やガンになりやすいのでしょう、平均寿命は低いのではないかと思われます。高齢の人をあまり見たことがないのです。〔注:WHOが発表した2021年版の世界保健統計によると、日本は男女平均84.3歳で世界1位、ミャンマーは69.1歳で世界125位〕

▲ミャンマーの一般的な料理。とにかくすべてが油っこい