貧しくても困っている人は放っておけない

ミャンマーの有名な観光地というと「シュエダゴン・パゴダ」や「アーナンダ寺院」といった仏教関連の施設が挙げられますが、ほぼすべてのミャンマー人が敬虔な仏教徒です。

▲夜はライトアップされていて、とても幻想的な雰囲気を醸し出している「シュエダゴン・パゴダ」

「現世で徳を積むことで来世も人間に生まれ変われる」というような輪廻転生の教えを信じているので、みな熱心に修行しています。出家している人も珍しくありません。

かくいう私も2年目に出家しました。日本で「出家」というと、“大変な修行を長い期間しないとできない”といったイメージを持たれている方が多いと思いますが、ミャンマーでは数日、寺院で修行すれば出家できるので、ハードルは全然高くありません。仏教はミャンマー市民の生活に本当に深く根づいています。

今でこそ、映画館やショッピングモールなどができて、休日になると人が集まっていますが、ミャンマー人の休日の過ごしかたの定番といえば、お寺や仏塔へ行くことなのです。

平日でも、時間があれば寺院へ立ち寄る人も多いですし、先に挙げた有名観光地の「シュエダゴン・パゴダ」は、デートコースの定番になっていたりします。

▲毎年12月にピンウーリンという公園で開かれている花の博覧会。このようなイベントや寺院への参拝などで休日を過ごしている

そして、仏教の教えを忠実に守る民族性ゆえ、ミャンマーは世界でも有数の寄付国家なのです。寄付金額はアメリカに及びませんが、所得に対しての割合なのか詳しくはわかりませんが、世界一になったこともあったと思います。〔注:イギリスの慈善団体が調査した世界寄附指数によると、2019年10月の調査結果ではアメリカに次いでミャンマーが総合第2位[Japan Heartホームページより]〕

寺院とかに寄付することはもちろん、道端で困っている人にお金を出してあげる。「寄付」の項目ではミャンマーが第1位。洪水や災害があったら支援金を寄付する。自分も貧しいけれど、困っている人がいたら手を差し伸べるのです。

ただ、これにはミャンマーの税金制度がしっかり確立されていない、という側面があると私は思っています。ほとんどの人が税金を納めていませんから。税金代わりに寄付をしてるんじゃないのかなと思ってしまうんです。これはあくまで私見なので、あしからず。

「住む」よりも「訪れる」がオススメ

民主化されてからは、外資系企業がミャンマー進出を始めて、私の会社の周りにもネスレやプルデンシャルがあります。飲食系だとロッテリアとかケンタッキーとか。コカ・コーラは現地の代理店が販売しています。

ただ、正直に言って外国人が住むにはちょっと厳しい国です。先にも言ったように、かりそめの民主主義ですから、行動はすべて軍部に監視されており、国内も自由に行き来できません。

できたとしても、その行動は必ずトレースさているんです。というのも、宿に泊まるときは必ず身分証明証を提示しなければならないからです。もちろん、その情報は軍部に逐一いっています。

それから、家賃がとにかく高いんです。2LDKで月40万円しますからね。〔注:東京都千代田区の相場が30万円[CHINTAI調べ]〕

ミャンマーで土地を持っている人というのは、ごく限られたひと握りの富裕層で、一般市民は地主から土地を借り、家を建てて暮らしています。

外国人は、その地主が経営するアパートやマンションに入居することになるわけですが、とにかく値段設定が強気なんです。というのも、別に入居してもしなくても、地主は全然困らないからです。

日本だと、固定資産税とかがあるので入居してくれないと困りますが、ミャンマーでは税金がかかりませんし、土地は死ぬほど持っていてお金もあるので、一室空こうがどうでもいい。

一方で、外国人が住めるところの選択肢というのはほとんどなくて、そのほとんどが強気の地主ばかりですから「その金額がのめないなら別に住まなくていいよ」となります。なので、そういった値段で住まざるを得ないのです。

なぜ、居住地の選択肢がほとんどないかというと、まず理由の1つに停電問題にあります。ミャンマーでは停電が頻繁に起こりますが、私たち外国人には馴染みがありませんから、生活していくうえでとんでもないストレスになります。ですから、自家発電システムがあったり、発電機が常備されていたりする場所を選ぶ必要が出てきます。

そしてもう1つ、治安の問題ですね。周辺国のタイなどに比べると物騒ではありませんが、空き巣などの窃盗事件はありますから、セキュリティのしっかりしている所でないと安心して生活できません。ですので、おのずと居住地の選択肢は限られてくる、というわけです。

▲外国人向けのコンドミニアムの室内。家具や家電などは備え付けで、インターネットも引かれている

このように、住むにはかなり大変な国ですけど、観光で訪れるにはいい国だと思います。ミャンマー人はみんなニコニコしてますし、一年中暖かくて時間も穏やかに流れている感じがしますから、心身ともに癒されるのではないでしょうか。

ただ、食事には少し気をつけないといけません、油でお腹やられてしまいますから(笑)。

▲ミャンマーのロッテリア。一番人気なのは意外にも「ごはんセット」