懐かしい気分にさせてくれるレトロな街並み

お腹が満ちたら、次は街の散策である。まずはあてもなく、気分の赴くままにブラついてみる。日曜日ということもあるのか、商店街はシャッターが閉まっているところが多く、人気(ひとけ)も全然ない。下りたシャッターには『あまちゃん』の登場人物の絵が描かれているものもあって、放送から10年近く経つのに、いまだブームの片鱗が残っていた。

▲13時過ぎの久慈駅前。全く人がいない
▲駅前商店街のシャッターには『あまちゃん』の登場人物が描かれている
▲こちらは片桐はいりが演じた「まめぶ屋のあんべちゃん」

初めて来たはずなのに、なぜだか懐かしい気分になるのはレトロな街並みのせいか。昭和50年代くらいで時が止まっている感じがする。観光地なはずなのに、びっくりするほど人がいないのも妙だ。

こう言ってはなんだが……「萎えぽよ感」はこれまで巡って来た街の中でも随一かも。静止画のような風景を楽しみながら歩いているうちに『道の駅くじ』という建物に辿り着いた。ここへ来てようやく賑わいに遭遇し、ホッとする。

『道の駅くじ』は、久慈の特産品を扱う商業施設で、1Fの物産館では名産の「琥珀」をはじめ、海産物や農産物、土産物などを販売。2Fの『昭和の想い出博物館 レトロ館』では、昔の家電やパチンコ台、古いホーロー看板、ウルトラ怪獣など懐かしのソフビおもちゃなどが展示されている(EXIT が訪問した時の様子はYouTubeの久慈市公式チャンネルで見ることができる)。

▲久慈の名産品を扱う複合施設『道の駅くじ』
▲名産の琥珀。久慈の琥珀は9000万年前という最も古い時代のもので、世界でも指折りの品質だそう

職員の柏木美子さんが、久慈の最新事情を話してくれた。2000年頃までは4万人ほどいた久慈市の人口も、近年では減少の一途をたどるばかりだそう。自然に恵まれ、食も豊かで暮らしよい土地ではあるのだが、地域活性化のためにはまず安定した雇用、つまり働き口があることが大事だと言う。

柏木さん自身、一度は県外に出て暮らし、故郷に戻ってきたUターン組。久慈のことは愛しているけれど、外から人を呼び込むにはいろいろ足りないことが多い。シャッター街になってしまった街の風景を見ると、“なんとかしなくちゃ”という焦りを感じると、思いの丈をざっくばらんに語ってくれた。

今回、EXITが久慈に来たからといって、そうした問題が一気に改善するわけではないけれど、まず大切なのは心を寄せること、そして現状を知ることだ。それは兼近さん言うところの「小さな揺らぎ」に過ぎないかもしれないが、多くの人がその小さな揺らぎを認識することで、何かが変わるキッカケになったらいいなと切に思う。

『道の駅くじ』を出て、会場へ向かおうと駅に戻ると、JRの隣の三陸鉄道久慈駅の駅舎内に『あまちゃん』でおなじみの『リアス亭』を発見。劇中でピエール瀧が舌鼓を売っていた「うに弁当」の販売店として有名だが、蕎麦屋さんでもあるんですね。ホタテやメカブなど、三陸の海の恵みを活かしたメニューがあってとてもそそられるが、ラーメンを食べたばかりなので残念……。

▲蒸しうにを贅沢に使った「うに弁当」が名物の『三陸リアス亭』。三陸の海の幸を使った蕎麦やうどんも人気

≫≫≫ 明日公開の後編へ続く

※今回の取材は感染対策を徹底したうえで行いました。

▲あなたの街にチャラ男を呼びませんかSP