教授オススメ! 本場ヨーロッパのソーセージを紹介

イギリスのスコットランド特産のソーセージに「ハギス」(haggis)というのがある。羊の生のレバーと膵臓、ボイルした羊の心臓と腎臓を粗切りにし、これにスエット(牛や羊の腎臓に付着している脂肪)、豚脂の角切り、タマネギ、オートミール、塩、コショウを加えて挽く。さらに水を加えて混ぜてから、ケーシングの羊の胃袋に詰める。

オートミールは水分を吸うと膨脹して破裂するため緩く詰める。ケーシングの両端を結び、針を数ヵ所刺して通気孔をつくる。それを蒸し器に入れ、蒸し上げる。食べるときはスコッチウイスキーを振りかけて食べる。

▲スコットランド特産の「ハギス」 出典:十兵衛 / PIXTA

ドイツのソーセージの歴史は古く、昔から国内でさまざまなソーセージがつくられてきて、その種類は1500種以上だという。

その中には、肝臓を主原料にしてつくるソーセージも多く見られる。ドイツ語でソーセージのことをヴルスト(Wurst)といい、デリカテス・レバーヴルスト(Delikatess-Leberwurst)はその代表的なソーセージである。

豚の新鮮な生の肝臓を4割、塩漬け(80℃で加熱した良質な豚のばら肉)6割を合わせ、そこに食塩とさまざまな香辛料、タマネギなどを加え、これらを十分細かく切り、直径5〜6センチになるよう豚の腸に詰め、80℃で1時間湯煮または蒸煮し、その後、冷燻する。

このソーセージの外観はとてもクラシックというか素朴で、腸に詰める生地の配合や細断の加減、豚腸(ケーシング)の太さや長さなどでデコボコになったり、曲ったりと面白いのである。ところがおいしさの評判は高く、レバーの含有量が高いのでとてもやわらかく、パテのようにパンに塗って食べるのである。

我が輩はドイツ西南部にあるシュトゥットガルトのワインクナイペ(ワイン居酒屋)で、このデリカテス・レバーヴルストをプンパニッケル(ドイツの伝統的なライ麦パンで、酸味のある黒いパン)に塗りながら、辛口で知られるトロッケンワインを飲ったことがある。

黒パンに合う同系色のソーセージ。そこにパンからの爽やかな酸味と辛口のトロッケン。食の相性というのはこういうものなのか、と教えられたシュトゥットガルトの夜だった。 

カルプス・レバーヴルスト(Kalbs-Leberwurst)は、子牛(Kalb)の肝臓を使ったソーセージである。そのレバー7割から8割を使い、そこに2割から3割の子牛肉を加え、塩や香辛料を加えてから十分に細断し、ケーシングに詰める。それを湯煮または蒸煮し、冷まして30〜40℃になったところで、ソーセージを麵棒のように転がし、表面をよくマッサージする。

それを丸のまま一本、あるいは注文に応じた長さに切って販売されている。肝臓の使用量が多いので、ソフトタイプのソーセージに仕上り、これもパン等に塗って食べる。 

チューリンガー・ロートヴルスト(Thüringer-Rotwurst)は、ドイツのチューリンゲン地方の「赤いソーセージ」という意味。ドイツのソーセージを代表する製品の一つで、豚の血液と肉、肝臓を使ったおいしいソーセージである。

加熱済みの豚肩肉と頭部の肉、豚の肝臓、血液、舌を混ぜ合わせ、香辛料にコショウ、マージョラム(シソ科の多年草でハーブとして使われる)、ピメント(赤く大きなハート形の唐辛子)、クローヴ、生タマネギを加え、豚の腸に詰め、100℃で15分、80℃では105分間ほど湯煮したあと、冷燻する。

出来上ったソーセージは、ゴツゴツした感じで燻しているので表面が黒々としており、外観は武骨感を漂わせるが、切ってみると中は赤褐色で美しく、点々と白い脂肪身が散らばっている。切ってから炭火またはフライパンで焼いて食べるが、焼くととても香ばしいく、食べると独特のスパイス感がある。

▲ドイツのソーセージの歴史は古い イメージ:YuliaFurman / PIXTA

※本記事は、小泉武夫:著『肝を喰う』(東京堂出版:刊)より一部を抜粋編集したものです。