「大気の大循環」で起こる赤い砂嵐
火星にはとても薄いのですが、地球と同じように大気の層があります。平均気圧は地球の1%以下ですが、このような岩石惑星に薄いとはいっても大気がある以上、気圧の差が発生して強い風が吹き荒れます。
火星の強い風は、表面の赤い砂を巻き込んで大きな砂嵐を作り出すので、一番強いときには、地球から望遠鏡で見ていても火星の模様が見えにくくなることがあるほどです。
さらに、火星には「季節」があります。と言うことは、温かい大気と冷たい大気が大気圏内を移動して循環がおこることになり、ますます地球の環境に似てきます。
では火星の地形はどんなものでしょう。望遠鏡などで火星を見ると、まず目立つのは北極か南極に白い地域が見えることです。
専門的には極冠と呼ばれていて、火星の中では一番寒い地域ですから、ここには大気成分の二酸化炭素が凍ったドライアイスが多く、水が凍った氷も含まれていると考えられています。
季節がありますから、北半球が夏のときは極冠は南極にできますし、北半球が冬になれば極冠は北極付近に出現します。そして、季節の変わり目に極冠が溶けると、二酸化炭素を中心に固形だったものが気化して、冷たい強い風になって吹き荒れるというわけです。
つまり、濃度が薄いとはいっても、火星でも地球のように北半球と南半球で大気が大きな流れを持ち、惑星中を大気が一定のパターンで循環する、いわゆる「大気の大循環」という現象が起こっています。これでますます環境が地球に似てきました。
オリンパス火山の高さは27,000メートル
火星の地形は、北半球と南半球で明白な違いがあることが知られています。北半球は比較的平坦な盆地のような地形です。これについては、かつての火山噴火で溶岩が流れ出すことによって、平坦な地形になったと考える人や、過去に水が今よりずっとたくさんあって、それが表面を削っていった結果できたと考える人もいます。
その一方で、南半球はたくさんの隕石がぶつかった跡が残っており、多くのクレーターや特に巨大な隕石衝突でできた窪地が見られます。そのため少し大きな望遠鏡で火星を見ると、北半球と南半球の明るさが異なることがわかります。平坦な盆地とクレーターがたくさんあるところでは、太陽光の反射率が違っているのです。
火星の北半球は、溶岩が流れ出して冷え固まったために、平らな盆地になっているという説があると書きましたが、そういう溶岩を吹き出す火山も今の火星に残っています。特に大きくて、接近した火星探査機が観測した最大の火山は、オリンパス火山と呼ばれています。
周囲の平坦なところからの高さは、なんと27キロメートルもあります(火星には海がありませんから、地球のように「海抜○○メートル」という表現ができません。そのため研究者がどこから計測したかで、この火山の高さが微妙に変わります)。富士山の高さが4,000メートルもないのですから、富士山より一桁高くそびえ立った火山といえます。