ありとあらゆるバイトで下積み

つまらなかったけど、安定していたサラリーマンを辞めて飛び込んだ芸能界。もちろん、すぐに食えるようになるわけがない。というか、今でもそれ一本で食えてないのだが……。

23歳の駆け出しから46歳の現在になるまで、ありとあらゆるジャンルのバイトをしてきた。ガソリンスタンド、トラック運転手、カラオケ屋、キャバクラのボーイ、サパークラブ、居酒屋などの飲食店、土木作業、警備員、訪問販売、舞台の大道具などなど、キツい仕事もいっぱいやってきた。

そのなかでも、地元の先輩のツテで働かせてもらった建築の基礎工事のバイトはつらかった。真夏に灼熱の太陽を浴びながらマンションの土台を作る仕事なのだが、コンクリートを流してして固めるために設置する、ひとつ10キロ弱ある枠を両手に持って、無数の鉄筋をまたぎながら往復する。

熱中症で倒れる者もザラにいて、俺も途中でフラフラになって日陰で休ませてもらったこともある。休んだら穴を掘り、掘った土をネコと呼ばれる一輪車で運ぶ。それが延々と続く。体力には自信はあったが、相当キツい仕事だった。

訪問販売は、社内に個人の成績表が貼り出され、売上の悪いやつは社内にいづらくなるし、社員から長時間の説教を食らうのがつらかった。

サパークラブ(ホストクラブのようなもの)では、金持ち社長がキャバ嬢を連れてくるから、社長や彼女たちを喜ばせるために夜な夜な一気(飲み)を繰り返した。毎晩のようにトイレに行ってゲロを吐くのが当たり前。というか、吐かないともたない。若い時だからできたが、この歳だともう絶対できないと思う。

舞台の大道具のバイトは、昼間にイベントがあるので夜中に仕込まないといけない。夜のうちに荷下ろしと設営を始めるが、やがて体力的に限界がきて朝方の記憶はほとんどないことも多い。

バイトは収入面で大きな助けとなるが、やがて自分の年齢が上がれば上がるほど、上司が年下になる。慣れない仕事で年下にこき使われ、時には罵倒されたりするのは惨めなものだ。

だが、売れない芸人を続けてきて思うことは、この世で1番キツいのは「仕事がない」ことだ。

働きたくても働けない。仕事がこない。これが1番キツい。だからその不安を埋めるようにバイトに勤しむ。仕事がないと不安ばかりが先立つから、とにかく働く。

バイトをして生計を立て、その合間にオーディションに行く。小さくてもテレビの仕事が決まったら「これで売れるかも!」なんて淡い期待を抱く。

その当時の仕事といったら、ドラマのちょっとした役に、再現VTR、テレビCMのちょい役などなど、とにかくもらった仕事はなんでもやった。