あんだけネタ合わせして“このネタ?”が1番の大ボケ
――吉本で良かったと思うのはどういうところですか?
田渕 (たくさんの)劇場があるところですね。NGKなんかその最たるものですけど。大阪時代なんて、まず、若手が出る劇場のオーディションに受かる→劇場のメンバーに入る→そこで少し頑張る時期があって、そこからやっとNGKの本公演、本出番を貰えるようになる。そういう明確な段階があるから、目標を定めていきやすいですよね。
――なるほど。インディアンスはそこで結果を出し続けてきたってことですね。
田渕 吉本で、2年ぐらいで音を上げるやつ、いないんじゃないんですかね。折れるやつは折れて、たぶんいなくなってまうと思うんですよ。そこを耐え抜いたやつが結果、上の劇場とか、いろんな場所での出番を勝ち取れるという会社ですよね。
――では、今の多忙さもノーダメージですか?
田渕 はい。もっともっとって思ってますよ。俺ら、まだ暇なほうやと思ってますもん。いっぱい寝れてますから。
――きむさんはお子さんもいらっしゃるし、プライベートも充実させたい気持ちもあるんじゃないですか?
きむ 僕、それはあんまないですね。仕事でガンガンいって、結果出してることが家族の幸せにつながると思うので。個人的には家族と過ごしたいですけど、まずは仕事が第一ですね。吉本は層が厚いから気を抜かれへんていうのがある。
田渕 気抜いたらすぐ追い越されるもんな。
きむ この『伝説の一日』だって、たぶん僕らと同じぐらいの芸歴の人が全員出れてるわけではない。層が厚すぎるので走り続けないかん。それが吉本のいいところかもしれないですけどね。
――売れても過酷な環境ですよね。
田渕 過酷やと思います。恵まれている部分と過酷さがどっちもある会社。
きむ 過酷じゃないとね、たぶん生き残れないんで。
田渕 吉本は、売れたやつがちゃんと金持ちになれる会社です。劇場は結果を出していけば出してくれるから、そこで頑張って自分らで知名度を上げていく。ほんま、自分たちでのし上がっていく会社で、のし上がれた人はめっちゃ稼げますよね。超、夢ありますよね。エグい会社やと思いますけど、めっちゃ好きっすよ。
――忙しい毎日のなかで幸せを感じる瞬間はいつですか? どういうところに喜びを見出してますか?
きむ 僕らネタ合わせを毎日するんすけど、そのなかで、たぶっちゃんがめっちゃいいボケ出してくれるときとか、それだけで1日気分良くなったりしますね。このネタで、このボケが出てて、そしたらまたこれでちょっと強いネタ作れるぞって。僕には、まだ『M-1』で優勝するぞっていうのはめちゃくちゃあるんで。
田渕 僕は舞台上で、いいアドリブ決まったときですかね、はい。パッて浮かんで言ったら、お客さんめっちゃウケた! とかってなったら、やっぱめちゃくちゃ気分いいですよね。
――結局は漫才のことなんですね。ニューヨークにもインディアンスのネタ合わせはすごいって言われてますよね。こんなに売れているのに、しっかり長い時間かけてきっちりネタ合わせするっていう。
田渕 それが僕らの一番の大ボケかもしれないんですよ。毎日集まって2~3時間やって、ほんで出来上がるネタがあれやから(笑)。めっちゃいいフリやなと思うんですよね。そんな集まって考えなあかんか? そのネタっていう。
――お客さんにその部分は見えないし(笑)。
田渕 そうなんです、ほんま自分らだけの大ボケやってるんですよね。めっちゃ細かい綿密な、それこそ伏線がいっぱい張ってあって、最後に回収するとかいうネタは俺ら一切ない(笑)。それなのに毎日2人で会って作ってますからアホみたいですよね。でも、それが一番おもろいのかなと思います。「なにしてんのやろ感」というか、ええんかこれで?みたいな。ええんちゃう? お客さんわろてるし、みたいな感じなんですよね。
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