中国で渡航移植する「移植ツーリズム」の実態

こうしたことが日本と関係があるのか? こんな思いをされている方もいることだろう。

答えは簡単だが、その答えで心が乱される方もいるかもしれない。国外の者が中国で渡航移植する「移植ツーリズム」の調査を始めた瞬間から、突然「日本」の存在が極めて大きく浮上してきたのだ。

中国への渡航移植については不明な点が多いが、中国の医学文献には示唆するものがある。自慢話のように語られることもある。心臓や肺1つにつき、外国人は15万ドル(約1800万円)を支払うと見込まれることもある。富裕な日本人の中には、1つの臓器に100万ドル(約1億2000万円)以上支払った人もいるようだ。

臓器の価格を値切ることを嫌悪する日本人の傾向を示すものとも言えるが、少なくともこの問題に注視する我々のあいだでは、日本から中国への渡航移植者数は、ほかの国に比べて多いという非公式の合意がある。

▲中日友好医院 出典:N509FZ(ウィキメディア・コモンズ)

我々の調査で浮上した病院の1つに中日友好医院がある。中国政府と日本政府が共同で設立した。同医院は日本政府から補助金を受けている。複数の国や地域の外国人や、中国共産党の中央委員会の幹部に医療提供をしており、臓器移植も含まれる。

ベッドは1600床、スタッフは500人以上。2015年には中国で最も競争力のある100の病院の中で43位にランクインしている。看護師は日本語を話し、病院のメニューには日本料理があるという。

つまり日本政府は、中国と日本とのあいだに特別な医療関係を築くために努力してきた。そして、具体的な結果をもたらした。コネのある日本人が臓器移植を必要としていれば、優先的に瀋陽の中国医科大学附属第一医院に入院できる。中日友好医院同様、中国医科大学附属第一医院も、日本語を話す中国人看護師を雇い、日本からの渡航移植者に対応している。

現在ではウイグルのイスラム教徒が臓器を搾取されている。中国のいくつかの病院は、イスラム教徒用の礼拝室やイスラムの掟に従って殺した肉のみを使うハラル専門の食堂を用意して、湾岸諸国からの渡航患者に対応している。

内部の情報筋によれば、EU諸国内では(少なくとも天津第一中心医院では)ドイツ人が渡航移植者の1位にあるという。また、中国への渡航移植では、台湾人は長年にわたり、人口一人あたりの割合で日本人と競い合っていた。

※本記事は、イーサン・ガットマン:著/鶴田(ウェレル)ゆかり:訳『臓器収奪――消える人々』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。