超絶盛り上がる「工場対抗大運動会」

毎年10月には「工場対抗大運動会」が行われる。これは、刑務所の関係者全員が盛り上がる塀の中の一大イベントだ。

開催時期が近づくと、受刑者たちはその準備に忙殺される。その理由は、年末年始の行事など多くのイベントが刑務所サイドからのお仕着せのものばかりなのに対して、運動会だけは受刑者自身が役員を選んで刑務所サイドやほかの工場の役員と折衝を重ね、プログラムを作り、選手を選ぶ主体的なイベントだからである。

出場する選手として選ばれた受刑者は、運動時間中、筋トレやランニングに余念がない。日常、運動時間でも走るのは禁止されている受刑者にとって、走り通すことが肝心なのである。

運動会の種目は、100m走や500mリレー、障害物競走など、いずれも勝負の順位が一目瞭然のものばかりだ。人並みの体力があれば、誰でも怪我せずに参加できる種目に限られる。成績が良かった受刑者にはノートやボールペンなどの賞品が手渡され、勝ち点がボードに加算される。

受刑者は、処遇の種類や内容、刑期、犯罪傾向などによって分類され、それぞれ別々の舎房に収容されているが、運動会は合同で行われる。

刑務所の運動会は、紅白対抗という大雑把な組分けではなく、工場対抗のため、どの工場担当刑務官も優勝を目指し、率先して計画を練り、受刑者たちを激励し、受刑者たちもその熱意に応えようとするのである。

日頃、刑務作業中は私語禁止で黙々と作業する受刑者とは、別人のような意気込みである。先述した通り、刑務所の年間行事の中で、受刑者と刑務官が真に協働して行われる運動会は、もっとも盛り上がるイベントといっていい。

ただし、実際の運動会で当の刑務官は、自分の工場が活躍していても、監視という重要な任務をまっとうするため、制服姿で黙って見物していることが多い。

ちなみに、在日米軍関係者が収容されている横浜刑務所横須賀刑務支所でも運動会は行われている。彼らは日頃から鍛えているだけに、日本人とは比べものにならないくらい強く、大活躍することは言うまでもない。