ツイッターやインスタグラムなど、SNSを開けばいつでも情報を入手できる時代。しかしながら、刑務所という場所だけはそう簡単には情報を引き出すことはできない。法務省刑事施設視察委員会委員長等を歴任した「日本で一番、仕事で刑務所に入った男」が受刑者が楽しみにしているイベントについて紹介します。

※本記事は、河合幹雄:著『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

慰問は「刑務所イベント」人気NO.1

受刑生活のイベントの中で、受刑者がもっとも楽しみにしているのは、月一回程度の慰問である。

慰問に訪れる者はボランティアであるのでノーギャラだが、歌手や漫才師、落語家などさまざまなジャンルの芸能人が訪れ、時には売れっ子の大物タレントがやってくることもある。

ちなみに、受刑者が鑑賞の際に許されているのは拍手のみ(タイミングも事前に決まっている)で、手拍子や一緒に歌を口ずさむことは禁止されている。

刑務所慰問で有名な芸能人と言えば、歌手で俳優の杉良太郎氏である。彼はデビュー時から60年にわたって刑務所慰問を続け、その功績に対し、法務省は大臣顕彰状を贈っている。杉氏の訪問回数は約100回を数え、訪問先は全国74の施設にのぼる。

杉氏と並んで、今、受刑者から絶大な支持を得ているのが女性歌手ユニットの「Paix2(ぺぺ)」。彼女たちは慰問という言葉は使わず「プリズンコンサート」と表現する。

2000年のデビュー以来、400回以上のプリズンコンサートをこなし、全国の刑務所から引っ張りだこの「刑務所アイドル」である。

Paix2(ぺぺ) OFFICIAL WEBSITE

刑務官のポケットマネーで映画鑑賞会

慰問と同じく、月一~二回、休日に開催されるのが、刑務所内で「集会」と呼ばれているイベントだ。

「集会」とは刑務所内で行われている映画鑑賞会のことを指し、模範囚だけが参加することができる。上映される映画は過激な描写が少ないものが中心で、受刑者を刺激しないヒューマンストーリーやアクション映画が上映されることが多い。

どの映画を上映するかは教育担当の刑務官が決めているのだが、その映画の費用はすべて刑務官のポケットマネーから出ているという。担当刑務官自らレンタルビデオ店でDVDを借りてきて、受刑者のためにさまざまな映画を上映してくれるのだ。

ただし、上映時間は1時間程度であり、観ることができる映画は限られている(一度の集会で全編を観ることができない映画は、二度に分ける場合もある)。