ツイッターやインスタグラムなど、SNSを開けばいつでも情報を入手できる時代。しかしながら、刑務所という場所だけはそう簡単には情報を引き出すことはできない。法務省刑事施設視察委員会委員長等を歴任した「日本で一番、仕事で刑務所に入った男」が、性事情・隠語・宗教問題など刑務所内のタブーを大胆解説します。

※本記事は、河合幹雄:著『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

受刑者の知られざる「性」事情

刑務所に入所すれば、男性受刑者にとっては、生身の女性を見る機会はほとんどなくなる。慰問に訪れる歌手か、見学に訪れる女性、面会人くらいである。女性がいないとなると日々悶々としてしまうのは、受刑者も一般男性も同じである。

性欲を我慢するのは難しいので、相手がいなければひとりで処理するしかない。基本的に不審な行動は懲罰の対象になるが、エロ本などの閲覧は禁止されてはいないので事実上黙認されていると言っていい。

ただ、周囲の環境がそうさせるのか、シャバでは一切興味なかったはずだったのに、同性愛に走る受刑者も少なからずいる。受刑者同士の隠語に、「アンコウ」と「カッパ」という言葉があるのだが、アンコウは男役でカッパは女役を意味している。穴があればどんなところでも入っていくからアンコウで、どんなものでもすぐにくわえるのでカッパということらしい。

ちなみに、恋愛感情のもつれは時として悲劇を生むこともある。同性愛的感情を持っていた仲間が急によそよそしくなったことを恨んで、刃傷沙汰になった事例があるのだ。

このようなことが起きないように、刑務官が同性愛的感情に気付いた際は、工場替えや部屋替えをして、引き離すように配慮をしている。