信仰者がもっとも多いのは仏教

信教の自由は受刑者にも認められている。休日などの自由時間であれば、礼拝などの宗教行為を行うことが許されている。

刑務所内で信仰者がもっとも多いのが仏教で、刑務所に訪れる僧侶の多くは仏教系である。教誨と呼ばれる宗教講話が刑務所内で月に数回開催され、そこで信仰に目覚める受刑者も多い。

また、仏教ほどではないがキリスト教や神道なども、教誨がたびたび開催されている。

ただ、イスラム教への配慮は不十分であるという指摘がある。

2017年、イスラム教徒の受刑者から改善を求める要望書が、当時女性が服役していた栃木刑務所と法務省に提出された。イスラム教徒の女性は、礼拝時に手と顔以外をスカーフで覆う必要があるのだが、そのスカーフの所持を栃木刑務所では認めなかったのだ。

既定のサイズよりも大きいというのが認めなかった理由であり、刑務所側で代替品を用意したが大きさが不足していたという。

また、礼拝の時間を確認するための時計の所持を許可しなかったなど、イスラム教に関しては、ハラルだけでなく、今後理解を深めていく必要があると言える。

受刑者による「不服申し立て」の事例

受刑者は刑務所内で不当な扱いを受ければ、刑務所所長、法務大臣だけでなく、かつて私が委員長を務めた刑事施設視察委員などに対して不服の申し立てができる。

この制度は「不服申立制度」と呼ばれるもので、願箋に内容を書いて願い出れば、是正措置がとられることになっている。また、不服の申し立ては些細なことでも可能である。

以下、実際、過去にあった不服申し立ての事例を紹介する。

・運動場の備え付けサンダルが大きすぎる
・入浴日なのに入浴を禁止された
・朝食の主食の中に異物が混入していた
・洗濯物の乾きが十分でない
・梅雨時、畳に小さな白い虫がわいた
・毛布カバーの洗濯をしてくれなかった
・カルテに記載されていない薬を投与された
・毎日、動作時限表より30分以上も早く配食された
・蛍光灯のカバーの中に虫が多く入り薄暗いので、掃除してくれるように願い出たが、掃除してくれない
・汚いスプーンで食べさせられている
・反則行為をしていないのに懲罰を科せられた
・運動中、運動のことについて尋ねたところ、職員から叱られた

以上が受刑者からの申し立てになるが、緊急を要するような深刻なものではなく、シャバでもあり得そうなクレームが散見する。

刑務官は一日に多くの受刑者を相手にしなければならないので、時として勘違いや間違えは起こってしまうものと考えられる。

とはいえ、このような些細な申し立てであっても、刑務所は受刑者の申し立ての一つひとつに真摯に対応していることをご理解頂きたい。