今回の参議院選挙での候補者アンケートでも賛否が分かれた「夫婦別姓」。結婚したら必ず夫の姓にならなければいけないなど男女不平等だ、という声が上がっている。しかし、夫婦別姓こそが男女不平等を招くもとだと、元外交官の馬渕睦夫氏は指摘しています。

※本記事は、馬渕睦夫:著『道標(みちしるべ) -日本人として生きる-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

家族を破壊すれば共産革命が起こしやすくなる!?

馬渕 今の時代は、なんでも「権利」という言葉を使いたがる傾向にありますね。権利を持ち込むと、権利と権利が衝突して社会は必ず混乱します。そういう常識を学校で教える先生もいないでしょう。というか、先生も教えられない。

――なるほど。

馬渕 「親の言うことを聞かないのも子どもの権利だ」なんていう、とんでもない先生もいるくらいです(笑)。それどころか、国連が制定した「子どもの権利条約」に、このことが規定されているのです。

つまり、国連が「家族破壊」を狙っていることがよくわかる一例ともいえるでしょう。

イギリスの小学校では、こう教えるそうです。

「先生が教えることと、家で親が教えてくれることが違っていたら、まずは親の言うことを聞きなさい」と。家族というものが、いかに重要な社会の単位であるかということです。

だから、リベラルという名の左翼思想の人々が、社会秩序を崩壊させるためにまずやることは、社会の最も基本的な単位である「家族」の解体なのです。

馬渕 家族を大切にすること、家族を守るということが、いかにも古い、反近代的な考え方であるかのように、多くの現代人は洗脳されてしまっているのではないでしょうか。

それは、共産主義革命の第一の目標が、まさに同じものであるということを、我々は知らなければなりません。人間社会の絆を分断し、個人をアトム(原子)単位にしてしまう。

子どもを親元から引き離して国家で育てるという発想などは、まさに共産主義者のものです。絆のない人間をつくる、そうなれば、洗脳は思いのままにできる。「右向け」と言えば右を向く人間をつくりやすくなるわけです。新興オカルト宗教も同じですね。

だけど、家庭教育がしっかりしていれば、右に対して左があり、左に対して右があり、真ん中があるということを家族でしっかり学ぶことができれば、社会は堅固なものになる。

共産革命なんて、やすやす起こせなくなるわけです。だから、左翼というのは、「家族」というものを最も憎むのです。

▲家族を破壊すれば共産革命が起こしやすくなる!? イメージ:タカス / PIXTA

わたしたちは“自由”に生きていけるのか?

――「権利」から「家族崩壊」につながるとは思いもよりませんでした。同じように「自由」という言葉も都合よく利用されているような気がします。

馬渕 そうですね。「もっと自由に生きよう」とかね? だいたい、自由に生きることなんてできるわけがない(笑)。日本には1億2千万の人間が生きているわけですね。彼らが全員、自由勝手にやっていたら社会は成り立たなくなる。

そもそも不満のない社会生活なんてありません。いや、社会生活というのは不満だらけです。人間がいれば、それだけ衝突があるということですから。社会というのは不満で満ちあふれている……。そういうことを教える学校の先生っていないでしょう? だから社会に適応できない子どもが出てくる。

▲わたしたちは“自由”に生きていけるのか? イメージ:zon / PIXTA

落ちこぼれや引きこもりをつくっている原因は、「なんにも拘束されない自由が最も素晴らしいのだ」という戦後のリベラル的な価値観が、その最大の理由の一つです。

――個人主義が発達しているといわれている欧米でも、家族という単位は特別の意味を持っていますか?

馬渕 保守系で知られたレーガン大統領も「家族を大切にしよう」と訴えていました。そうすると、左翼リベラル勢力に一斉に叩かれる。家族が本来の意味を持ってしまうと、彼らは革命を起こしづらくなりますからね。メディアによる国民の洗脳工作も上手く機能しなくなる。

そういうことも知らずに、日本のリベラルとか進歩派という人たちは踊らされているわけですね。夫婦別姓の議論なんてその最たるものです。

――「夫婦別姓」で起こりうる問題というのは、あまり認識されていませんね。

馬渕 「夫婦別性で何が悪いの?」と若い人たち、特に女性の皆さんは思うかもしれませんが、私は「夫婦別姓は家庭崩壊のための方便でしかない」と随分前から警告を発してきました。

夫婦別姓にしました。では子どもの姓はどうなるのですか? 子どもに自分で決めさせるのですか? 兄弟が3人いたらどうなりますか? 夫婦間で争いが起きたらどうなりますか? 

決まらないときは、家庭裁判所で決めたらいいと言う人もいましたが、まったく馬鹿げている。そう考えれば、この論がいかに破綻しているかがわかります。

中国や韓国では、父母が別々の姓で、子は父親の姓になるのが通例です。無知な進歩派はそれを見て「さすが中韓は進んでいる」とか言っている。

それが女性差別だということがわからないのですかね。女性は「家」に入れてもらえない、これを差別と言わないで、なんだというのでしょうか?

男女平等だから夫婦別姓にしろと言うけれど、男女平等とは自分に都合が良いように使われている口実に過ぎないのですね。夫婦別姓にして、どうして男女が平等になるのですか? 別姓夫婦の下で父親と娘が同姓であれば、男女平等に反することになるのでしょうか?