ウイグル人弾圧と関連して、現在も続く中国での生体臓器移植ビジネス。新鮮な臓器を生きながらに摘出・殺害し、臓器移植のために提供する中国政府の蛮行は、日本人にとっても他人事ではない。中国分析のベテランジャーナリストであるイーサン・ガットマン氏は、移植ツーリズムに参加する日本人顧客の存在を示唆しています。
高齢で富裕な日本人のポケットから・・・
国外からの渡航移植者数の国籍の内訳に関しては、多くの要素が不確実であり、米国も含む多くの国家が非難されるべきだ。しかし、国外からの渡航移植を調査してきた医師、そして人権専門家のあいだでは、次の意見が一致している。「日本は中国の臓器移植システムにとって、海外からの収入源として第1位だ」。
その大部分は、国家間の外交的な取り組みによるものではない。その大半は、日本の高齢で富裕な個人のポケットから出ている。さまざまな噂を無視して医療ツアーに相当する団体に加わり、意識的に臓器がどこから来るのかは考えないようにして、決断した人々だ。
日本からの金銭の流れを持続させている唯一の主張は、「知らなかった」だ。日本だけではない。15年にわたって、この「知らなかった」は世界の言い訳だった。しかし、この言い訳はほころび、使い古され、不道徳なものとなった。
英語圏の主流新聞はすべて、臓器収奪の調査結果を報道している。欧州議会と米国議会は、中国本土で行われている、法輪功・ウイグル・チベット・中国家庭教会(=中国政府非公認のキリスト教会)からの臓器収奪を明確に非難する決断を採択した。
世界保健機関(WHO)と国際移植学会だけが、欧米の団体として、不当に拘束されている囚人及び、文化・宗教・人権を理由に拘束されている人々からの臓器収奪を積極的に否定している。新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の流行期間中、いかにWHOが中国本土と密着しているかは皆が認識した。そして国際移植学会は、中国本土と密接に協力する傾向にある。
これらのグループが、中国共産党との協力を継続できるようにしたものは、2015年からの移植制度の改革――特に臓器源として死刑囚には依存しないという主張だった。この改革には、一貫性のない数値、囚人も自発的ドナーであるとする迷走、魔法のように突然整備されたドナー制度など不審点が伴う。そして改革のあとも、移植手術は変わることなく続いた。移植病棟は建設の真っ只中にあり、平常通り営業中である。
ウイグル人に行われる強制的な「健康診断」
状況はさらに悪化していた。2016年、新疆ウイグル自治区の衛生局は、12歳以上のウイグル人全員に強制的に「健康診断」を実施した。最終的に、カザフ人とキルギス人も対象となっており、回族の可能性も指摘されている。漢民族はすべて検査を免除されている。
「健康診断」の結果通知を受け取ったというウイグル人には出会ったことがない。はっきり言うと、臓器摘出のための組織型に適合するかを調べるために、中国の中央政府は人口1000万人のウイグル人から強制的に採血しているということだ。
2015年初め、中共当局は新疆ウイグル自治区全域にわたり、収容所を建設するよう命令を下した。2016年末までには、少なくとも100万人が収容所に拘束された。約2ヶ月ごとに、全ての囚人は血液検査や心電図、肺などの小売できる臓器のスキャンなど、総合的な健康診断を受けていた。
2017年初頭、地元の当局は、新疆全域にわたり9つの火葬場を新設するように指令を出した。最初の火葬場はウルムチにあり、中国の新聞に護衛50人の求人広告が掲載された。
同時に新疆では、臓器を運ぶための「グリーンの優先通路」が空港に設けられた。2016年のカシュガルとウルムチでの最初の優先通路の導入は、中国でも最も功績のある陳静香瑜・胸部心臓外科医が呼びかけたものだった。これらの空港の利用者数は、中国平均から見て非常に少ない。この優先通路の意味するところを推定していただきたい。「特殊旅客 人体臓器運輸通路」という意味の表示があり、外に向かう一方通行だ。
新疆ウイグル自治区にあるアクス県の一平方キロメートル内には、病院・収容所・火葬場が集まっている。2つの収容所で約5万人を収容する。既存の移植病院は1つの収容所内に組み込まれ、巨大な火葬場が1キロも離れていないところにある。移植病院から空港までは車で20分、中国南方航空が「グリーンの優先通路」を設けている。
上海から遠くない浙江大学医学院附属第一医院は、アクス県からの臓器を利用している可能性がある。2017年、肝移植が90%増加、腎移植が200%増加している。2020年3月1日、同医院は新型コロナウィルスに感染した患者への初の両肺移植を成功させ、国外から渡航移植を考えている者に、新型コロナによる医療機器の期間でも中国の移植機関は営業中であることを宣伝した。
※本記事は、イーサン・ガットマン:著/鶴田(ウェレル)ゆかり:訳『臓器収奪――消える人々』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。