中国分析のベテランジャーナリストであるイーサン・ガットマン氏によって指摘された、中国政府によるウイグル人弾圧と関連する、臓器移植ツーリズムに参加する日本人の存在。中国本土の生体臓器ビジネスとの関わりを絶つために、まずは“知る”ことから始めてほしい。それが、これまでの死者(そして生きている者)に意味を与え、敬意を表することになるからだ。

世界はドナーの犠牲者数を無視してきた

書き手としての私の役割は、自分の住む社会で成長してきた共犯の文化を暴露することにある。臓器収奪の悲劇は紛れもなく中国の中央政権によって引き起こされた。しかし、我々の社会での医療腐敗がそれを助長してしまった。中国の龍の背中に乗ったあとは、まるで何事もなかったかのように自宅に戻ることができると思った、一握りの医師たちの手で。

事態の緊急性を感じていただけないかもしれない。新疆ウイグル自治区で現在使用されている、グロテスクな“通貨”について把握していただくことは、さらに難しいだろう。ウイグル人女性のメリイェム・スルタンが、中国当局に宛てた短いメッセージから読み取ってほしい。

「母を返してください。私の血液と腎臓を提供します。私の血液型はO型で、私は32歳です」

何をすべきか、結論として少し触れたい。まず、すべきではないことから始めよう。良心の囚人(無実の人々)からの臓器収奪はない、というフリをしても問題の解決にはならないこと。

“手配された”中国の移植病院を数件視察しただけで、中国が自称する「医療改革」の検証をしたことにはならないこと。国際移植学会の倫理委員会、臓器の強制摘出に反対する医師団(DAFOH:Doctors Against Forced Organ Harvesting)のメンバーであるジェイコブ・ラヴィー医師の言葉を引用したい。

「1944年、国際赤十字がテレージエンシュタットのナチス強制収容所を訪問した際に、快適なレクリエーションキャンプだと報告した大変な過ちを繰り返さないことが、ホロコースト生存者の息子の義務だと感じています」

中国の医療当局からの“回答”や“説明”は不要だ。数字の捏造を奨励するだけだ。中国政府による臓器提供者の数は、ラヴィー医師やマシュー・ロバートソンのような調査者によって、完全に否定されている。

欧米または国連の「公式調査」を求める声も不要だ。中国に圧力をかける戦略だと思われているが、まったく作用しない。中国は、単に“消毒”された病院を視察団に見せるだけだ。証拠に関する詳細な報告などが必要であれば、2019年にロンドンで下された「中国・民衆法廷」の裁定を読んで欲しい。

より短いものとしては、共産主義の犠牲者記念財団(VOC)発行のマシュー・ロバー
トソンによる報告書「Organ Procurement and Extrajudicial Execution in China : A Rev iew of the Evidence」をお薦めする。中国の医療“改革”は、これ以上は要らない。

中国は2012年にチャンスを摑んだ。当時、国際移植学会・バチカン・WHOには、中国の中央政府と手を握っている仲間がたくさんいた。世界はドナーの犠牲者数を無視した。中国の中央政府は、法輪功からの臓器収奪を止めるべきだったのだが、中国の移植政策はそのまま続き、さらにウイグル人の犠牲者が倍増することになった。

▲『臓器収奪』より

この問題で日本ができることを考える

ラヴィー医師によると、2008年にイスラエルが渡航移植に対するスタンスを明確にして以来、イスラエルから中国への渡航移植者は1人もいなくなった。保健維持機構(HMO)傘下の保険から渡航移植費が賄われないようにしたことだけが要因ではない。中国がどれほどイスラエルのソフトウェアに投資しても、イスラエルの外科医たちは「二度とあってはならない」というホロコーストへの思いを強く抱いていた。

さらに、台湾が移植ツーリズムを拒絶したことは、中国からの軍事的な威嚇を考えれば、実に果敢なことだ。台湾の医療界と政界が手をとることは可能なのであれば、日本もできるはずだ。

欧米のアパレル製品のサプライチェーンが、新疆ウイグル自治区の綿と強制労働を締め出している現在、同じメカニズムを利用して、日本国内で医療利潤を生み出す中国の移植とのパイプを調査し、切断し、縫い合わせる必要がある。

中国への移植ツーリズムに関与する医師や病院、ブローカーのみを検挙するというだけでは止まらない。グーグル検索が一般化する現代社会では、ワンクリックでアポがとれてしまう。犯罪に至る前に移植ツーリズムそのものを停止させるべきだ。

中国の豪華な移植病院のサイトをクリックしようとする者は、児童ポルノのサイトにアクセスしようとする者同様に、日本の当局が追跡すべきである。

殺人者には近寄らないこと。入国管理で足止めさせれば、中国の移植医が日本の学会や大学、言うまでもなく病院に足を踏み入れることはない。世界保健機関(WHO)や国際移植学会を崩壊させる必要はない。しかし、現在のWHOの事務局長を交代させ、国際移植学会のフランシス・デルモニコ元会長の一派を放逐する運動に、日本も参加すべき時期ではないだろうか?

これらの目標達成に必要なコンセンサスを構築するための団体を、日本の医師が形成してはどうだろうか? 法的に禁じられるものでもあるまい。このような団体への支援も法的に禁じられていない。

しかし、日本の医療界だけでこの問題が解決できるものではない。米国議会や欧州議会の決議だけでなく、日本の国会の決議も必要だ。すでに行われてきた調査を見直し、新たな調査に乗り出す必要がある。日本国民の中国への渡航移植を監視し、国民がこの動きを支持する必要がある。

▲この問題で日本ができることを考える イメージ:barman / PIXTA

※本記事は、イーサン・ガットマン:著/鶴田(ウェレル)ゆかり:訳『臓器収奪――消える人々』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。