「あの人が急に、死にたいって言ってきたんですよ」。コンビニのバイト仲間の森田から聞いた衝撃のひとこと。放っておけない。福田健悟は、自分なりのアドバイスを森田を通して“その人”に送り続けた。そして届いた「福田さん。やりましたよ。ついに転職を決意したみたいです」という報告。そんな彼の名は――。

会話を通じて急激に縮まっていく3人の距離感

彼の名前は、山内くん。時間が経つにつれて、話す頻度も増えて、次第に仲良くなっていった。僕が髪を染めていた頃。

「あれ? 福田さん。髪染めたんですか?」

「そうそうそう! 見た目が地味だからさ、少しでも派手に見えるように」

「僕も昔は、青色とかにしてたんですよね」

「青色!? また珍しい色にしてたね。バンドやってたとか?」

「そういうわけじゃないんですけど」

「え? まさか不良だったの?」

「ん〜、まぁ……」

どう見ても、彼は悪かったようには見えない。細身でメガネをかけていて、真面目そうな雰囲気だ。年齢は23歳。高校卒業後に、ITの専門学校に行って“落ち着いた”と言う。昔の写真を見せてもらうと、特攻服を着ている山内くんが写っていた。

「店長! すごいですよ! 彼めちゃくちゃ意外な過去を持ってます」

「ん? え! なにこれ!? 山内くん?」

僕たち3人の距離は、急速に縮まった。この頃のシフトは、森田が2年間ホームステイでハワイに行くことになって、僕と店長が週3で一緒に働くようになっていた。山内くんは仕事柄、あまり人と話すことがなくて、3人で話すことがストレス発散になると言っていた。

「2人と話すの楽しいんで、毎日1回は来ますね」

この言葉通り、彼は僕たちの休憩時間に合わせて、欠かさず店に来るようになった。仕事先は、IT系の仕事から、IT系の仕事に転職。同じ職種でも、人間関係が改善されて楽しそうだった。だが1年後には、フリーになるために再び仕事を辞めた。今回は、前回と違って前向きな転職だった。こうなることを見越していたのか、前の仕事をしていたときに、残業をして取り組んでいた作業が実を結ぶことになる。あるシステムが、大企業に4000万円で売れたのだ。

「ちょっと、すごすぎじゃない?」

「いや、正直もうちょっと貰えると思ったんですけどね」

満足していなかった。クレジットカードか、何かの決済に関わるシステムらしく、今までにない画期的なモノだったようだ。あまりのことに、企業側は彼に入社テストを持ちかけた。ヘッドハンティングではなく、力を見るためだ。ほんの一握りしか入ることができない会社で、テストは超難問。それを彼はラクラク解いた。過去に合格した社員と比べても、成績はトップクラス。

彼は幼い頃から、皆と違う考え方を持っていたらしい。水道の蛇口ひとつとっても、目に入ったときに、仕組みや原理に頭がいく。かたや、僕はせいぜい“銀色だな”と思ったくらい。