仕事がしんどい、でもまだ大丈夫……まだ頑張れる……。あなたが「まだやれる」「まだ大丈夫」と思っているとき、からだは不調を訴えているかもしれません。Twitterやnoteで人気の漢方アドバイザー・タクヤ先生こと杉山卓也氏が、こころをいたわり健康に暮らすための過ごしかたを紹介します。薬に頼らず、こころの“プチ不調”と向き合ってみませんか?

※本記事は、杉山卓也:著『タクヤ先生、漢方でこころを元気にする方法、教えてください!』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

「まだやれる」の危険性を知ってほしい

▲「まだやれる」は限界のサイン イメージ:プラナ / PIXTA

僕に相談をしてくださる方で、こころや体が壊れてしまったという方の多くに共通するのは、「まだやれる」という気持ちで無理をし続けてしまった、ということ……。

そこで、僕はSNSでメンタルケアの発信をする際、必ず「まだやれる」は「もう限界」のサインですよ、とお話ししています。

実際に、お客様に「まだやれる」と思っていたときの状況をうかがうと、かなり高い確率で、すでに体にさまざまな異常が出ていたと話されます。

これらの貴重な体験談を参考にして、皆さんにご自身を守っていただければと思いますので、以下、体験談の一部をご紹介します。

  • 日替わりで体中の筋肉のさまざまな部位に、痙攣(けいれん)やしびれが起こる
  • 意識が日に何度も飛ぶ
  • 季節は冬で寒いのに、なぜか大量の汗が出てくる(夏で暑いのに悪寒がする)
  • とてもツラいのに、なぜかおかしくて笑いが起きてしまう
  • 息がうまく吸えない、吐けない
  • 体中の感覚が薄く、五感が機能していないと感じる

もし、皆さんにこのような症状が起こっていたとして、それでも「まだやれる」という言葉を口にされるのであれば、その危険性をどうか自覚していただきたいと思います。

対策としては、まずは何より必ず休む時間を優先して設けること。たとえ上司に怒られても、無理をしてでも、です。そして、ある程度の休息を設けても、これらの症状が収まらない場合は、仕事や家事など、その元凶になっているものから離れることを真剣に検討してください。

「それができれば苦労しない」という考え自体を、どうか封印してほしいと思います。

仕事において、あなたの代わりは必ずいます。ですが、あなたの人生において、あなたの代わりはいません。「仕事はそうかもしれないが、父親や母親の代わりはいない!」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、倒れてしまえば、その大切な役割を担える人がいなくなってしまうことを、くれぐれもご理解いただきたいと思います。

代わりのいない自分自身を大切に

少し別の角度からご説明しましょう。

ものを食べるときに「満腹だ! もう食べられない」となるのは動物界では人間だけと言われています。なぜなら、人間以外の動物は、絶対に「満腹」という状態を避けるようにするからです。いったい、なぜでしょうか。

それは「満腹が体にとって異常な状態であることを本能的に理解しているから」と言われています。

このことからもおわかりいただけるように、「満腹」とは病的で異常な状態なんです。「もう少し食べたいな」と感じる“腹八分目”の状態こそが、本来の「満腹」なのですから。これは、勘違いされている方も多いのではないでしょうか。

したがって、体もこころも負荷で「満腹」にしてしまうことなく、あくまで「八分目」まで、と心がけておくとよいですね。

どうか、代わりのいない自分自身を大切にしてください。

「甘いものは別腹」という言葉がありますね。でも、そもそも「別腹」なんてものは存在しません。食べた分だけしっかりと太りますので、くれぐれもご注意ください。

▲症状が出ていたら勇気を出して休もう イメージ:asaya / PIXTA