はちさんに聞くアナログとデジタルの違い

――(笑)。でもたしかに、ご自身の活動にすでにファンがついていた、というのは大きいですよね。すごく素人っぽい疑問だったら申し訳ないのですが、イラストを描く際に、アナログとデジタルの違いはあるのですか?

はち 自分の場合、アナログで言うと水彩画を始めたのが高校1年からで、デジタルはフォトショップを主に使ってたんですが、これも本格的に使い出したのは会社に入ってからなんです。なので、小さい頃からどちらかに慣れ親しんでいたら違いを感じるものなのかもしれないんですが……うーん……(笑)。あ、でも唯一あるとすると、失敗できない緊張感がアナログにはありますね。

――なるほど。これも素人質問になってしまうかもですが、達成感はアナログのほうが大きいけど、始めるまで“腰が重い”とかはあるんですか?

はち あ、ありますね。自分の場合はデジタルがメインなので、アナログは準備するのに時間がかかるなぁとか、色を作らないといけないなぁ、とかは思うことはあります(笑)。ただ、自分で好きなクリエイターさんが使ってた画材や道具を使って、勉強したりできるので、アナログはアナログの楽しみがあります。

――はちさんが頭の中に思い描いているイメージを具現化しやすいのは、アナログとデジタルどちらですか?

はち デジタルですね。それは色味もそうなんですが、“直感で表現できる”というのが大きいかもしれません。頭の中で思いついても、水彩だと色を作るひと手間がありますが、デジタルは思いついた色をすぐに試すことができます。

――たしかにそうですね。例えば、この液タブ(液晶タブレット)じゃないとダメ、とか、この道具じゃないと、みたいな環境のこだわりはありますか?

はち こだわり……、大学はデザイン学部がある学校に通っていたんですが、そこではMacintoshを使っていたんですが、会社に入ったらWindowsだったんです。

――え、そうなんですか? 勝手にデザインやイラストはMacintosh一択だと思ってました。

はち たぶん、会社としてメンテナンスがしやすい、というのがあるんじゃないかなと思います。そこでは板タブを使っていたんですが、フリーになるタイミングで液タブにしたんです。正直、環境も道具もそこまでこだわりはなく、あったものでなんとかできるんですが、液タブは自分に合っているなと思いました。あと、トラックボールは買ってよかったなと思いましたね。

散歩していてもカエル目線で見てしまう

――はちさんの作品を見ていると、ブレイクタイムがテーマの作品が多いような気がするんですが、なんとなくコーヒーにもこだわりがあるのかなと思ってました。

▲こちらは花の香りがしてきそう 「おいしいお紅茶のいれかた」イラスト:はち

はち おっしゃる通り、コーヒーは好きですね、ゆくゆくは豆から挽きたいと思っているんですが、今はまだクラフトボスに頼っています(笑)。

――(笑)。いつか豆から挽いてこだわりの一杯を作って欲しいですね。作業しているときは音楽などを流したりしているんですか?

はち iPadでYouTubeを見ています。よく見ているのは2BRO.(ツーブロ)さんのゲーム実況や、生き物系の動画ですね。

――やはり、まんぷくかえるを描くはちさんは、生き物系の動画をよく見られているんですね。個人的には、はちさんの絵はとても瑞々しくて、まるで動き出しそうという表現がぴったりだと思っているのですが、はちさんご自身が自分の絵を見たときに、強みだなと思うところはありますか?

はち アニメーション会社に勤めていたので、いろいろな作品を担当させていただきました。『ルパン三世』『アイカツ!』、会社を辞める間際に『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の背景をやって、いろんな絵柄に対応できるようにしてきましたので、自分のイラストに“こだわりがない”というのが強みかもしれないなというのと、やはり7年アニメ会社に勤めていたので、“アニメのような背景”というのが自然に出ているんじゃないかと思っています。

――先程もチラッと話題に出させていただいたんですが、はちさんの作品といえば「まんぷくかえる」が印象に残る方が多いと思うのですが、この愛らしいキャラクターが生まれたキッカケについて教えてください。

▲「最近お腹が出てきました」イラスト:はち

はち 趣味で風景のイラストをSNSで投稿していたんですけど、それだけだと寂しいかな見ている人は風景だけだと退屈なのかな、と反応を見て思ったんです。それなら、子どもの頃から好きだったカエルを書こうかな、と思ったのが始まりです。そこから、カエルの生活感を出していったり、自分のやりたいことをカエルにやってもらったり。例えば、ずっと寝てたいとか、もっといっぱい食べたいとか(笑)。

――そう言われると、たしかにカエルってツルッとしてるけど、まんぷくかえるは体温がある感じがしますね、そういうはちさんの願望を投影しているから、温かみがあるのかもしれないですね。

はち ありがとうございます。たしかに、カエルに自分を投影していったらあの形になった、というのもありますし、あとはこの前散歩していたら、木からいくつかキノコが段になって生えていて、「あ、階段だ」と思って写真を撮ったんですけど、あとから“これ完全にカエル目線で見ちゃってるな”と思いました(笑)。

――微笑ましい! 実はカエルが苦手なんですって言われたら、どうしようかと思ってました(笑)。

はち いえいえ(笑)。小さい頃から動物全般が好きです。そのなかでもなんでカエルだったんだろう、と自分で考えたこともあったんですが、小さい頃も「けろけろけろっぴ」のグッズが家にあったなあって(笑)。