歴史好き芸人として、さまざまなメディアで活躍し、書籍も多く出版しているブロードキャスト!!の房野史典。NHK総合の『歴史探偵』でもおなじみの歴史研究家・作家の河合敦との共著『面白すぎる!日本史の授業――超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす』が出版され、話題となっている。

これまで彼が出版してきた日本史にまつわる書籍とは違う点、そもそも歴史好き芸人として活動することになったキッカケ、そして注目しておくべき歴史上の人物や歴史マンガなど、多角的に聞きました!

これまでの著作と違うところは「通史」

――これまでも、『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』や『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』など、さまざまな角度から日本史に関する著作を発表してきた房野さんですが、河合敦さんとの共著となる『面白すぎる!日本史の授業――超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす』を出版することになったキッカケはなんだったんですか?

房野 『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』が最初の著作だったんですが、その出版のタイミングで河合先生と対談させていただいたことがありまして、もともと大ファンだったもので非常にうれしかったんですが、そのウェブ記事を読んだあさ出版の方から「ぜひ房野さんと河合先生の共著で」とご連絡いただきまして、それがキッカケでしたね。

――今作がこれまでの著作と違うところは、共著であること以外にもありますか?

房野 通史を扱ったことですね。これまでは戦国時代や幕末と、ある程度絞ったテーマで書いていたんですが、今回の本を作るにあたって、編集の方にリクエストされたのが「古代から幕末のラストまでで、河合さんと房野さんでいくつかトピックを選んでもらい、そこから選別したテーマを、河合さん房野さんそれぞれの視点で書いていただきたい」ということだったんです。それを聞いて、“うおー、これは来たな!”と(笑)。

――というのは?

房野 僕自身、すごく興味があってインプットがある程度できている時代もあれば、その時点でインプットが済んでいない、少し知識がまだらな時代もあるわけです(笑)。だから、とりあえず通史を一度ざっと勉強して、そこから更にこの本で扱ってみたいトピックを洗い出す。インプットとアウトプットを並行していった感じですね。

――なるほど。それだけの労力や時間がかかっただろうな、というのが伝わってきました。

房野 本当ですか? よかったです。

――往復書簡のような作りになっているから、ひとつのテーマでも、房野さんの柔らかいけど深くて面白い切り口があって、そこをあとに続く河合さんのテキストで補足して説明したり、“房野さん、それは言い過ぎでは?”みたいなツッコミもあって、非常に楽しく読みました。

房野 本当に、河合先生がいてくださってこその書籍というか、僕以上に先生は大変だったと思いますし、コントロールの悪い投手の球を全部受け止めてくれるキャッチャーみたいに信頼していました。

――テーマの選定はどのように行ったんですか?

房野 僕と先生で出したテーマに、編集部の方の“ここは扱ってほしい”という意見を集約した感じです。僕と河合先生の出したテーマは、カブるところもあれば、そうじゃないところもあって。なので、僕ひとりで書くんだったら取り上げないようなところも、この本では触れられたのでよかったですね。ただ、僕から書き始めるような構成になっていて……、結果的にすごくよかったんですけど、“あ、これかなり責任重大だな”って思いました(笑)。

――日本史は学校の勉強でしか触れてこなかったのですが、それでも単純に人間ドラマとしてすごく楽しく読みました。

房野 ありがとうございます、うれしいです。

歴史好き芸人のきっかけは山口トンボとキングコング西野

――個人的には、お笑いが好きなので、ブロードキャスト!!さんといえば、どこに行ってもしっかりウケる漫才と、ライブのMCも出演者全員にオイシイところを作ってあげる、そんな八面六臂な活躍を見せるブロキャスのお二人を見てきたわけなんですが……。

房野 あははは! うれしいですけど、本当そう言ってくださる方に会えるのは時々です(笑)。

――そもそも、房野さんが日本史好きの芸人を打ち出していったのは、どういう経緯だったんですか?

房野 先ほど、ありがたいことを言ってくださったんですけど、自分の中ではずっと鳴かず飛ばずって感じだったんです。たしかに、当時は若手のなかでも人気があって、ランキング制のライブでも上のほうにはいるけど、全国放送のテレビには出ていない。営業はそこそこあって食えているし、吉本の芸人というカテゴリーの仕事はたくさんもらえているけど、こんなものいつか絶対に先細っていく、と思っていたんです。

――AGE AGE LIVE全盛期とかですかね。

房野 まさにそうですね、人気はあるけど、この先どうしようかなって考えているときに、僕が前からよく話したり相談していた、山口トンボという放送作家がいて。今はカジサックのYouTubeの作家で、動画にも出てますけど。

――元けんだまの山口さんですね。

房野 よくご存知で(笑)。そう、元芸人で、名古屋よしもとで僕と同期なんですよ。前から一方的に相談していたんですけど、そのときはさっき言ったみたいなことを踏まえて、“この先どうしたらいいかわからない”って相談したんですね。そしたらトンボが「どうすればいいかはわからないけど、房野は何かを解釈したり、説明したりする能力はすごく高いなって思ってるよ」と言ってくれて、でも自覚はなかったんです。

そしたらトンボが続けて、「俺が作家やってて、房野がMCをやるライブがあるけど、ゲームコーナーのルールを噛み砕いてお客さんに伝えてくれるから、すごく助かってる」って具体的に話してくれたんで、たしかに、自分の強みって自分ではなかなか気づかないものなんだなって。

――でも、トンボさんの言う通りだと思います、僕も本当にブロキャスさんがMCのときは、とても見やすかった。

房野 ありがとうございます(笑)。個人的には自分でMCやりながら“あれ、俺、いま何を説明してんだっけ?”って、見失いながらやってたことも多かったんですけどね(笑)。

――え、そうだったんですか?

房野 はい、実は(笑)。ただ、それが強みに見えているのはわかったけど、じゃあ“どうしたらいいか”ってのはよくわからなくて。そしたらまた別の機会に、今度はトンボと、キングコングの西野さんと飲む機会があって。そのときに、トンボが「房野がこういう悩みがあって、僕は房野のこういうところが優れてると思うんです」「でも、房野も僕も、それをどう活かせばいいかわかんないんです」って、軽くプレゼンしてくれたんです。

そしたら、西野さんが「じゃあ、その噛み砕くうまさを文章で残そうよ」って言ってくださって。正直、当時はブログやってる芸人も多かったんですけど、僕は本腰入れてやってなくて、文章を書くってのが頭になかったんですね。

――なるほど、それを西野さんが導いてくださった、という。

房野 はい。もともと本を読むことは好きだったけど、書くということに頭がいってなかった。でもたしかに、コンビとしての活動って、すごく楽しいしやりがいもあるけど、配信が当たり前ではない時代だったんで、アーカイブも残らないんですよね。その頃、ちょうどFacebookが流行り始めていたんで、試しに当時やっていたライブで披露していた「応仁の乱」の話を文章にして、Facebookに上げてみたんです。

そしたら、すぐに西野さんが「これは面白い!」って言ってくれて、そこから僕のことを知らなかった人も知ってくれて、幻冬舎の方が興味を持ってくれて……って感じですね。トンボと西野さんが言ってくれなかったら、こうやって好きな日本史で仕事をもらったり、本を出したりすることもなかったと思うので、本当に感謝しています。