たった一度の転倒が、人生を狂わせてしまうことがある。「平成30年版 高齢社会白書(全体版)」によると、「骨折・転倒」は高齢者が要介護となる主な原因において4番目の多さとなっている。それを防ぐために提唱したいのが「新聞紙体操」。10万人の患者を診てきた日本リハビリ学会功労医・林医師が、新聞紙を使った健康寿命を高める方法を教えます。

※本記事は、林𣳾史:著『新聞紙体操』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

「転倒・骨折」の治療に年間1兆円!?

みなさんは知っていますか?
たった一度の転倒が、人生を狂わせてしまうことがあることを。

「平成30年版 高齢社会白書(全体版)」によると、「骨折・転倒」は高齢者が要介護となる主な原因において、「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱」に続き、4番目の多さになっています。

高齢者に多いのは大腿骨の骨折で、要介護状態になることも珍しくありません。さらに言うと、不慮の事故による死亡原因として、「骨折・転倒」は「交通事故」に続く2位という数字が残っているのです。

一方、現在日本では転倒後のけがや骨折の治療にかかった、医療費と介護費用が年間9300億円あまりになると言われています。これは由々しき数字です。

あなたの祖父母や両親が100歳まで生きる時代となったときに、介護を必要とする期間は短いにこしたことはありません。健康寿命を延ばすために必要なことは、転倒とつまずきを避けること。認知症や脳卒中などと同じく、「転倒・つまずき」を予防することは、国にとっても最重要課題なのです。

まずは一番簡単な方法で、ご自身の筋肉量を測ってみてください。

  •  両手の親指と人差し指で輪を作る。
  •  利き足ではない脚のふくらはぎの一番太い部分を輪っかで囲む。
サルコペニア肥満 イラスト:PIXTA

指と脚に隙間ができる人はサルコペニア(加齢で筋肉が衰えた状態)の可能性があります。転倒・骨折リスクの注意が必要です。

さて、私が今回提唱する「新聞紙体操」は、楽しく毎日を過ごせることをテーマにしたトレーニングです。高齢者向けのリハビリとして基礎的な運動に、新聞紙と新聞棒を使ったアレンジを加えました。運動が苦手な方でも苦になりません。

体全体を動かして筋肉や骨を刺激し、また指先や口などを使って他人と交流することで脳の活性化も促します。簡単にできる上に効能に関しては折り紙つきです。

若い人は新聞をとっていることは少ないかとは思いますが、高齢層にはまだまだ定期購読者が多いとも聞きますので、ぜひ試してみていただきたいと思います。