ライセンス「今が１番楽しく漫才できている」

賞レース用の漫才と自由にできる漫才の違い

――(笑)。ライセンスのお二人は、『M-1グランプリ』などのいわゆる賞レースには出られない年数になってますが、ネタの作り方、向き合い方などは変わりましたか？

藤原　去年、ツアーをやるにあたって、しっかりとネタを作ったんですけど、実際にツアーが始まって、“もっと自由でええねんな”って気づいたんです。そう思ってから、千秋楽に向けてちょっと足したりして。

今年は、そんな去年を踏まえてるんで気は楽ですね。それこそ賞レースも関係ないし、ありがたいことに我々を見に来てくださるお客さんの前でやるんで、“これが漫才だ”みたいなのもないし。もしかしたらライセンスとして、今が１番気持ちが楽で、楽しくいいネタが書けて、やれている感覚があります。

井本　コロナがあったことで、芸人として何ができんの？って問われたような気がしてるんです。じゃあ僕らは、どこで何ができるのかと考えたときに、板の上でネタをやるということだって見つめ直させてくれたな、と思ってます。生身のお客さんの前でネタをやる、それすら絶たれたのがコロナだったので、本当にお客さんの前でネタができる、この現状がうれしいですね。

賞レースに関しては、そもそも普段の劇場でやってる漫才と賞レースでやってる漫才って、同じ陸上競技でも100m走と砲丸投げくらい違うなって思ってて。

――なるほど。

井本　中川家さんの漫才が大好きなんですけど、中川家さんって“漫才を4分でやってください”って言ったらできると思うんです。でも30分見たい漫才じゃないですか。“これ、どこまで台本なんやろ？”って思うところも含めて。だから、制限時間のあるなかでやる漫才と、ある程度自由にできる漫才は別モンなんじゃないかなと思いますね。

藤原が「めちゃくちゃ笑った」と語る若手とは？

――ライセンスのお二人のネタはもちろんですが、トークもすごく好きで。だから、こういうツアーで新しい、ちょっと限りなく自由な感じのネタが見られるのは、とても楽しみですね。あと、『ENJOY!!』でカナリアさん、ラフコントロールさん、三瓶さん、アームストロングさんと一緒にワチャワチャしていた、あの雰囲気がすごく好きで。先輩後輩のいい関係を見せてもらったなと思ってるんですけど、後輩で“いいなあ”って思う方はいますか？

井本　若手の子のネタとか見たら、みんなすごいな、エグいことやってんなって思いますよ。僕らが、あの子たちくらいのときにやってたこととはぜんぜん違う。あと、僕らも歳食った、丸くなったって言われちゃうかもしれないですけど、昔ほど“なんじゃこいつ”って思わなくなりましたね。みんなちゃんとしてる。

藤原　そうですね。今パッと思い出したんは、去年の『M-1』のモグライダー。あれはすごい、ええ根性してんなって思いましたよ。トップで萎縮せずに自分たちの空気にもっていって。本当、出番がトップじゃなかったら、もっと結果も違ったんちゃうかなって。めちゃくちゃ笑いましたね。

――これは御本人たちに伝えたいですね、うれしいだろうなあ。しかも厳密に言うと、吉本の後輩ではないですもんね。

藤原　もう、そういう垣根みたいなのもないですよね。去年の『M-1』は当然、錦鯉もすごかったんですけど、モグライダーがトップバッターで結果を残したというのが大きいと思いますね。

――昨今、ライブは配信されることも多くなっていますが、今回のツアーはどうですか？

井本　今のところ予定はないですね。配信になったら、言うたらアカンことも増えるでしょ？

藤原　多くの人に見ていただきたい気持ちはあるんですよ？　だからもう、あまり大きな声で言えないですけど、盗撮して、勝手に流してもらえたら(笑)。

井本　いやアカンて！(笑)

藤原　いやいや。もう、吉本も俺らに向かって、そんな目くじら立てへんでしょ。

――(笑)。まずは会場で見ていただくということですね。

藤原　あと去年ツアーやって思ったのは、ネタやったあとに一旦、舞台からハケてからのトークで、そのネタが体を動かす系のネタだったんですけど、回復してトークに行くまでの時間がめっちゃかかって。

井本　あったな、袖でずっと落ち着くまで待ってもらって。

藤原　舞台監督さんから「もう行けます？」って聞かれて、「いや、ちょっと待って……」って(笑)。あれは情けなかったんで、今年はそんなことないように体力をつけたいと思います！

▲ライセンス漫才ツアー2022