外国からの参加者も今年は復活

また昨年は、ほとんど見かけなかった外国からの参加者も今年は復活。特に欧米では行動制限がない地域が多いこともあり、なかにはノーマスクで大声で話している集団も見かけた。そう言う人たちに取材するのはちょっと腰が引けるので、マスクをつけている外国人を探して声をかけてみた。

話してくれたのはドイツ人の男女。東京から参加した彼らは在日歴2年。二人とも現在の日本の状況に通じている。

「感染者が増えている状況での参加に不安はないですか?」と聞くと、女性は「野外なので比較的感染のリスクは低いと考えています。マスクをして距離を取るよう気をつけているし、もし罹ったとしても若い世代にとっては、今の株は深刻なことにはならないと思います」。

一方、男性は「実は僕、少し前にコロナにかかったんです。結構ツラかったから、もうかかりたくないけど、今は免疫が持続してると思うし。予防接種もしたので、用心のためにマスクはずっとしているけど」とのことだった。

今回は出演者にも陽性者が続出したことで、会場の掲示板には毎日「出演者キャンセルのお知らせ」が並んだが、こうなると観客のなかにも既に患者がいると考えるのが自然だ。いることを前提に対策、自衛するのが本当の意味での「ウィズコロナ」時代なのだと思う。

▲出演者の感染、または陽性反応によりライヴがキャンセルになったことを知らせる掲示板

フジロック初のキャッシュレス決済導入、でも・・・

もう1つ、今回のフジロックで特徴的だったのは、初めてキャッシュレス決済が全面導入されたこと。これまでも交通系のICカードが使用できた店舗はあったが、海外のフェスはほとんどキャッシュレスなので、その点でも国際化が進んだ印象だ。ところが会場の電波状況が悪く、端末に決済画面がなかなか表示されない。前出のモヒート店では従業員の私物であるポケットWi-Fiを使って読み込んでいた。

店舗のなかには「決済にかかる時間が、もっと短ければ効率良く注文をさばけるので、もっと売り上げが上がったのに」とこぼす人もいた。通信環境はフェスの重要なインフラでもあるため、来年以降に向けて改善が必要な部分だろう。

また、出店関係で印象的だったのは、値上げの波がフェス飯にも押し寄せていたこと。フジロッカーズに人気の『鮎茶屋』は、鮎の塩焼きを1匹800円に値上げしたことで、店頭にご丁寧にも「値上げのお詫び」を掲載していた。過去の資料を見ながら値段の推移を辿ると、500円(2014年)→600円(2017年)→700円(2021年)とじわじわ値上がりしてきたことがわかる。1匹800円は、以前と比べると1.6倍の値上げ率だが、買う側も目下の原料の高騰ぶりは知っているから、値上げをしても致し方ないと思うけど。

ほかの屋台でも「焼き肉丼」「スパイスカレー」「ラーメン」など、今年は1,000円の大台を越えたものが多くなってきた。そんななかで気を吐いていたのは、地元の観光協会が運営する『苗場食堂』。例年同様、名物の「きりざい飯」は450円で提供されていた。おそらくほとんど利益は出ていないのではないか。

▲リピーターに人気の鮎の塩焼き。『鮎茶屋』では店頭に値上げに関するお詫びを掲示

チケット代(39,800円〜49,000円)・交通費・宿泊費・滞在費と合わせると、フジロック1回にかかる費用は10万円〜15万円と高額化の一途を辿っている。ここ10年ほどは、メインの客層が中高年になっていることが指摘されているが、1997年の初開催当時からのフジロッカーとしては、ここでしか味わえないフジロックならではの魅力を、どうやって若い層に伝えていくかが課題だと感じている。フジロックを今後も長く続けていくためには、若い世代が体験し、支持してもらうことが必須条件だからだ。

今回はコラムの性質上、肝心の音楽のことについて書くことができなかったが、本来、フジロックは出演者と観客が一体となって織り成す音楽フェスティバルである。来年こそは本当の意味で「いつものフジロック」に戻って、いつも通りのイベントレポートを書けるよう、願ってやまない。