2021年の厳戒態勢での実施を経て、今年も7月29日(金)〜8月1日(月)にわたって、新潟県苗場市で開催された『FUJI ROCK FESTIVAL ‘22』。
コロナを取り巻く状況は、回復基調になると期待されていたものの、蓋を開けてみれば第7波のピークのタイミングで開催されることになってしまった。現場は一体どのような状況だったのか? 今年も3日間参加したライターが見聞きした「コロナ禍でのフジロック」、2年目のレポートをお送りする。
アルコールの販売も再開された今年のフジロック
「特別なフジロックから、いつものフジロックへ」
そんなテーマを掲げて開催された今年の『FUJI ROCK FESTIVAL ‘22』。新型コロナウイルスは依然として猛威をふるい続けており、フジロック会期中も東京の感染者は連日3万人、全国ではおよそ20万人を越えた。2021年の会期中は、全国2万5千人ほどで推移していたことを思うと、気持ち的には昨年以上に緊張感を持たねばならない状況である。
実際、「いつものフジロック」とは謳いながらも、会場内でのマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保、手洗いの励行などは昨年同様であり、参加者もガイドラインを遵守している人がほとんど。大きな混乱はなかった。
3日間の動員はおよそ5万9千人(1日目:1万8千人、2日目:2万1千人、3日目:2万人)。昨年が、のべ3万5千人だったことを考えると、客足が戻っているのは明らかだが、最も動員が多かった2017年は、12万5千人もの人が集まっていたことを思うと、まだまだ少ないなという印象。トイレや飲食店で長い行列に並ぶストレスがなくなったので、会場での過ごしやすさはアップしているものの、収益や活気を考えると心配な状況である。
既に報じられている通り、今年は、昨年中止されていたアルコールの販売も再開。アルコール飲料を扱う店舗の店員さんに「例年に比べて売り上げはどうですか?」と聞いてみると、「肌感ですが6割ぐらいですかね。イマイチです」との答え。
もっとも、これは一番入場者数が多かった2日目に行なった取材なので、3日間でならしたら実売は、それより下がるだろう。酒は売ってはいるものの、飲んで騒ぐことに関しては、例年以上に周囲の目が厳しくなっていることもあるため、心理的なハードルを感じるのは当然のことだと思う。
マスクをしている人の数を調査!
昨年との差位でいうと、今年はすれ違う人たちのなかにマスクをしていない人が多い。パッと見3〜4割と言ったところだが、実際はどうなんだろう。気になったので調べてみた。
定点調査を行なったのは、3日目である7月31日の14時35分から45分の10分間。場所はフィールドオブヘブンからオレンジカフェにつながる林道だ。行き交う人たちのなかでマスクをしている人と、していない人を「正」の字を書いてカウントしていく。この場合の「していない人」の定義は、鼻と口の両方が出ているかどうか、だ(よって顎にマスクをかけているような人も含んでいる)。
集計してみると、通行した462人のうち、「マスクをしている人」は222人、「マスクをしていない人」は240人と、なんとマスクをしていない人の方が多い結果になった。開放的な空間で、みんな気が緩んでしまったのだろうか……?
絶えず着用している私からしてみればショックな結果である。Café de Parisでモヒートを売っている店の店員さんと世間話中、思わず「今年はノーマスクの人が多くて大変でしょう」と言うと、彼女は「いえ全然。皆さん、ちゃんとマスクしていらっしゃいますよ」との答え。「いやいや、さっき実際に数えたら、してない人のほうが多かったんですよ」と言うと、店員さんは「注文するときは私たちと喋るので、つけてくださってるんじゃないですかね」
なるほど、つまり移動中や列に並んでいるときなど、言葉を発しないシチュエーションではマスクを外して、人と話す必要があるときや、密な空間にいるときはマスクをつけるという具合に、場面に応じた対策を一人一人がしているということだ。
ためしに飲食店に並ぶ人たちを観察してみると、確かに注文カウンターの手前でマスクを付け直している人が複数いた。これはフジロック云々というよりは、2年半にも及ぶコロナ禍での日常生活で身に付いたものなのだろう。
私自身も無意識のうちに身についているが、こうしたことはその場でいろいろな人に話を聞いてみなければ気がつけなかったことである。既に出ている記事には「ノーマスクのマナー違反」とか「ルール無視」などと書いてあるものもあるが、実態は決してそのようなものではない。
実際、来場者に聞いてみると、
「飲み物を飲むときだけ外してます」
「移動のときは暑いので下げてます。コロナより熱中症のほうが怖いので」
「同じグループの人と行動するときは(お互いに感染していないのがわかっているので)別に要らなくないですか?」とのこと。
なかには「正直、今日だけはいいかなと思って」と、深い考えなしに外している人もいたが、大半の人は状況に応じてマスクの扱いを変えていた。