「ファ〇ク!」と叫び突進してくる六本木の不良黒人
キサラの仕事がない日は飲みに行くことが多かった俺。この日は、地元の友人と六本木のクラブに繰り出した。クラブもいわばエンターテイメントの一環だし、面白いことがあればどんなことでも吸収してやろうという狙いもあった。
足を運んだのはわりと有名なクラブで、フロアは大勢の客で賑わっていた。
クラブは音楽に身を任せ、酒をあおり、カワイイ子がいたら声をかけて仲良くなったりと、楽しい場所ではある。だが、時にトラブルに巻き込まれることもあった。
芸人になる前の話だが、地元の友人と3人で遊んでいたら、周囲の客のことなど何も考えず、派手に踊っている3人組に出くわしたことがある。俺にもガンガンと何度も当たってきたし、はっきりいって迷惑だった。それを何度も繰り返されるうち、腹が立った俺は、そいつを軽く押し返すと、その3人はいきなり殴りかかってきた。まぁ3対3ならどうにかなるだろうと応戦したら、あれよあれよと敵の仲間が集まってきて、気がついたら30人に袋叩きにされたこともある。
クラブ遊びは注意が必要だ。
その夜も、六本木のクラブは満員だった。声をかけられるお姉ちゃんはいないかと、目をギラギラさせてフロアをパトロールする。手にはカウンターで買ったコロナビール。移動しながら、気がつけば飲み干していた瓶を空いてたテーブルに置く。
次の瞬間、近くにいた黒人が「オーマイガー!」と声を上げた。さらに、俺の置いた空き瓶を指差し、英語に身振り手振りで「俺のビールを、お前は間違えて勝手に飲んでしまった! 金をよこせ」とジェスチャーしているようだ。
たしかに、テーブルにはいろんな人の飲み物が置いてあったから、誰が誰のかはわからない。しかし、俺はカウンターで買ってから肌身離さず持っていたから、他人のビールを飲むはずがない。だが、その黒人は執拗に金を払えとアピールしてくる。
俺は瞬時に悟った。この手口で詰め寄れば、デカい黒人と揉めたくない一心で、700円を払ってその場をおさめる日本人が多いのだろう。なんてヤロウだ。
俺は身振り手振りで「ノー! マイドリンク!」と強めにピシャリと伝える。すると、エスカレートした相手は「ファ〇ク!」と怒声を上げながら、俺を突き飛ばしてきた。