阪神のリーグ優勝のお祝いにお呼ばれ

ある日、キサラの出番終わりで、知り合いから連絡が入った。

「阪神タイガースの和田さんのリーグ優勝のお祝いをやっているから行かないか?」

和田豊。阪神好きなら知らない人はいないだろう、往年の名選手である。その当時、和田さんは阪神タイガースのコーチをしていた。もちろん、そんなスターと面識があるわけもない。なぜ、しがない芸人の俺に、知り合いは声をかけてくれたのか? それは俺が大の阪神ファンだということを、この知り合いが覚えていてくれたからに過ぎない。

普段、どれだけ有名な芸能人を見ても、さほど興奮しない俺だが、阪神の選手、それも和田豊さんとなれば話が別だ。中高生の頃に、声を枯らして応援していた憧れの存在。俺のなかではアイドル以上の存在である。その和田さんをお祝いする会が、後援会主催で開催されているという。二つ返事で参加させていただいたのは言うまでもない。

だが、会場に向かう途中で、ふと不安になった。もしかすると、その会場はコアな阪神ファン、和田ファンの集まりで「印象に残っている打席は、どの試合だ」「和田さんが苦手だった投手を3人挙げてみろ」といったマニアックな話題を振られて、話についていけず恥をかくのではないかと……。

ドキドキしながら会場に着く。和田さんを囲んで大勢の支援者がずらりとそろうなか、和田さんにご挨拶して握手をさせてもらう。

もちろん口には出さなかったが、「スゲー! 本物の和田だ!」と、感動した。みんなの前でネタを少しかけ、軽く笑いを取ってから、自己紹介してからテーブルについた。

「関係ないのにお邪魔して申し訳ありません。昔から阪神ファンで、参加させていただきました」、隣の席に座った人に挨拶をする。熱狂的な阪神ファンで、芸人だからと無茶振りされたらどうしようかと考えていると、身なりのいい服に身を包んだ男性は「いや、野球よく知らんねん」と言った。

拍子抜けした俺は、なぜこの会に参加しているのかを訪ねた。

「ご縁があって和田さんと知り合って、それ以来、応援してるだけ。野球のこともよく知らんし阪神も知らん。和田さんの現役時代のこともよう知らん。でも和田さんの人柄に惚れてメッチャ応援してんねん」

そんな人でも、この会に参加できるんだとびっくりした。同時に気持ちが少し楽になった。聞けば、有名カレー店のフランチャイズを20店舗以上経営されている社長さんだという。社長は俺のことも気に入ってくれたようだった。

「これもなにかの縁だから、和田さん共々、君のことを応援させてもらうよ」

こうしてカレー社長とのお付き合いが始まった。