巨大プラットフォームに管理される「言論の自由」

2021年から2022年にかけて、オンラインサイトが苦しめられた。その要因は掲載基準を厳格化したヤフーニュース、そして検索順位ルールを頻繁に変える「Google」にもあるとメディア関係者は指摘する。

民主主義の根幹をなす「言論の自由」が事実上、民間の巨大プラットフォームを運営する会社によって管理される社会が到来しているようだ。

これまで民主主義国家と呼ばれる国では、「表現の自由」「出版の自由」「言論の自由」が最大限尊重されてきた。国家や行政機関が、これらを規制することは「圧力」「弾圧」であり、ダメなことであるというのは小学生でも知っていることのはずである。

しかしながら、プラットフォーマーによる規制については、行政が実施しようとするものと比べ、あまり批判が出ていないようにも映る。

月間840億PVを誇る「Yahoo! JAPAN」の集客の中核を担っている日本最大の無料ニュースサイト、ヤフーニュースだが、2021年の冬ごろから、ヤフーニュースに記事を提供している協力媒体への締め付けが厳しくなっているという。

「秋篠宮家と小室家に関する一連の報道を契機に、ヤフーニュース側から突然、『契約に違反している』という“クレーム”が頻繁に入るようになった。『関連記事のリンクが本記事と関連していない』というような指摘から、『見出しと本文が違う』『あえて入れる必要のない企業名が見出しに入っている』『個人の体験談だけをもとにした記事は削除せよ』といった指示が細かく入るようになった」(経済メディア記者)というのだ。

その指示の内容は「見出し」やリンクの問題が中心であり、「秋篠宮家騒動」と直接の関連はしていない。

「小室圭さんの中傷記事にひどいものが多かったことで、記事を転載したヤフーニュースに対する風当たりが強まってきたこともあり、この際ついでに他の部分も“浄化”してしまおう」ぐらいの八つ当たりだと怒りを感じる記者もいる。

「小室圭さんと眞子さんの結婚のあとで、ヤフーニュースの担当者が『もし、小室さん関連の記事を出すなら、ファクトオンリーでやってほしい』と編集方針にまで口を出すようになった。さらにはガイドラインが改定され、“圧”は強くなってきました」という。

これまで過激な見出しなどは、よほどのことがない限り、記事を提供する協力媒体の責任とされ、ヤフーニュース内ではスルーされていた。しかし、これは徹底的な取り締まりが始まったことを意味している。

▲巨大プラットフォームに管理される「言論の自由」 イメージ:metamorworks / PIXTA

これからネットメディアの進むべき道は?

このようにヤフーニュースが、協力媒体へのプレッシャーを強めるなか、有力メディアではヤフーニュースへの記事提供に距離を置き、米アルファベット社が提供するGoogle検索、Googleニュースへの接近を見せている。

「Googleで関連キーワードや記事タイトルを検索すると、自社サイトの記事よりヤフーニュースに配信した同じ記事が上位にヒットすることは多いです。しかし、ヤフーニュースで記事を読まれても大した収入にはならないので、なるべくならGoogleから直接自社サイトへ流入してきてほしい。実は、Googleのアルゴリズムでは、配信先を絞った方が上位にランキングされることがわかっており、今後、ヤフーニュースと距離を置くメディアが現れてもおかしくはない」(経済メディア編集長)

巨大プラットフォーム、ヤフーニュースにメディアは対抗できるのだろうか。共同通信(2022年6月22日)には、こんな記事が配信されていた。

「公正取引委員会は22日、ヤフーなど巨大IT企業が運営するニュースサイトへの記事配信契約を巡り、複数の報道機関が共同で巨大IT側と交渉することは法的に可能だとする見解を公表した。配信料を共同で決めて競争を制限することは認められないが、配信料の前提となるニュースサイト運営の収益について情報開示を求めたり、契約書の書式を統一したりする形での連携は、独禁法上問題ないと判断した。インターネットのニュースサービスでは、読者や広告主と関係を築く巨大ITの力が強く、記事を提供する報道機関の側には、取材コストに見合う適正な対価を受け取れていないとの不満が強い」

適正な対価をめぐっての争いは、今後、激化していきそうだ。

▲これからメディアの進むべき道は? イメージ:Rawpixel / PIXTA

だが、Googleなら安泰、というわけではない。

アルファベット社はGoogleアドセンスと呼ばれる広告サービスを提供している。自サイトにこのGoogleアドセンスを導入すれば、金額は時期によって違うものの、平時で「1PV約0.25円」の収入を受けることができる。ヤフーニュースからは配信を断られたり、配信できても「1PVあたり0.025円」と言われる格安の対価しかもらえない無料ニュースサイトにとっては、本当にありがたい存在といえる。

広告営業を実施していない無料サイトにとって、Googleアドセンスは収入のほとんどを占めているのが現状だ。PVに連動する広告収入は、広告営業がしっかりしたメディアであっても、やはり無視することのできない収入源の柱となる。逆にGoogleに嫌われてしまえば、「サイトの死」にもつながりかねない事態を招く。

一方で、Googleアドセンスは、コンテンツの内容ではなく、PVで広告費用が支払われるので「PV至上主義」となりがちで、コンテンツの質の悪化を招いているとの批判も受けている。