飛躍の助走期間でまさかの骨折……
スタッフの話を聞いたら、直前まで何度も細かいところに変更が生じたそうだが、愛来はその変更にも即座に対応し、こちらが求めている以上のパフォーマンスをパッと出してくれた、という。関係者席でも「あの子、すごいな」という声があちこちから聞えてきた。ある意味、愛来は昨年の段階で一度、この横浜アリーナのステージでシンデレラ的なポジションに立っていたのだ。
僕も見ていて鳥肌が立ったひとりで、すぐさま某アイドル雑誌に佐々木彩夏と愛来による対談とスタジオ特写の企画を提案した。とにかく『AYAKA NATION 2019』の完成度が非常に高かったので、それを広く知らしめたいと思ったし、なんなら表紙にしてもらえないか、というところまで話は大きくなっていた。ちょうど2カ月後には佐々木彩夏が座長を務める明治座での公演が控えており、その舞台にはアメフラっシのメンバーも出演する。その煽りを兼ねて、ドーンと対談ページを組むつもりでいた。
しかし、その企画は幻に終わってしまった。
なんと明治座公演を前に愛来が足を負傷したのだ。
「もう『なにやってんだよ、私!』って、自分に腹が立って仕方なかった。さっきも話しましたけど、私、こういうことがあると、ひとりで抱えこんでしまうタイプだったので(前々回を参照のこと)、しばらく引きずりましたねぇ~。せっかくのチャンスだったのにって」
明治座公演までに負傷は完治せず、愛来は第一部でのお芝居パートには杖をついて出演。当然のことながら、大きく動くことはできないので、基本、椅子に座っているシーンがほとんど。もし、ケガをしていなかったら、他のシーンでも出番があった予定だったので、それは自分を責めたくなる気持ちもわかる。第二部の歌謡ショーのステージには上がることすら叶わなかった。
そんな経緯があったので、今回、シンデレラを逃してしまったことは、愛来にとっては「またチャンスを逃してしまった」という心境につながってしまう。自分がチャンスを逃すことは、アメフラっシが軌道に乗る機会を逃した、ということにもなる。だからこそ、愛来は大粒の涙を流した。自分の分だけではない。メンバー4人分の涙がこぼれ落ちていたのだ。