何歳まで売れない芸人をやるのだろう

テレビや営業の仕事はなくなったが、単独ライブの日程は近づいてくる。純粋にチケット買ってきてくれたお客さんは10人くらい。震災の影響で大変な思いをしているのに、こんなことをしてる場合なんだろうかと何度も自問した。

ただ、俺には人を笑わせることしかできない。俺は恥を忍んで友人に頭を下げた。大変なときだったにもかかわらず、彼らは快く足を運んでくれ、当日会場は満席となった。

会場にはずっとお世話になっている木戸さん、大和さん、地元の友人、短大時代のライバル、カレー社長、後輩のぺこぱなどの芸人仲間、そして現在の嫁となる女性がいた。俺はステージが始まると、みんなに向けて深く頭を下げた。

「応援してるよ。テレビに出るときは連絡してよ」と親しげに言ってはくれたが、ライブに来ない人もいた。俺が汗と時間を費やしたネタに対して、時間とお金をかけるのは面倒ということだろう。そういう人に限って、「知り合いがテレビ出た」「あいつは昔から知っている」と自慢する。

こういう人たちとは自然と疎遠になっていくし、どれだけ困ってもこちらから連絡を取りたいとは思わない。すこし愚痴っぽくなってしまったが、売れない俺のためにライブに駆けつけてくれた人たちへの11年前の感謝の気持ちは、今でも忘れていない。

俺はいつか恩返しをする。そのためには、売れなくてはいけない。若い頃は「売れてやる」と自分を鼓舞していた。だが、気がつけば「売れたい」「売れなくては」という心境になっていた。俺は何歳まで売れない芸人をやるのだろう。そんなことを思って眠れない夜を過ごすこともあった。

俺は35歳になっていた。

(構成:キンマサタカ)

『TAIGA晩成 ~史上初! 売れてない芸人自伝~』は、次回11/4(金)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
TAIGA(たいが)
1975年生まれ。神奈川県出身。2005年『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』(フジテレビ)、2009年『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)、2009年の『あらびき団』(TBS)、2014年の『R-1』決勝進出でプチブレイク。下積み時代が続く中、2020年の『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)、2021年の『アメトーーク!』(テレビ朝日)出演で再ブレイクの予感がする46歳。Twitter:@TAIGAtrendy