守備、捕球、打撃、ブロッキング…反復練習の日々

そうこうしているうちに野手組の午後の練習が始まります。いくつかの班に分かれて、バッティング、走塁、ゴロ捕球、バント練習など順番に回していくのですが、僕らはブルペンでの捕球が終わったら、大急ぎでランチを食べて、まともに休憩をする時間もなく野手組の練習に途中から合流します。

だいたいバッティング練習を僕らキャッチャー班が最後にやらせてもらって、それが全体練習の終わりになることが多かったです。

そこからは、キャッチャー班の練習として、その日その日のメニューをこなしていきます。強化ランニングや、メディシンボールを使った体幹トレーニングなどです。

その後は、個別練習。バッティングコーチから特打の指名がかからない限り、ほぼ守備練習です。キャンプ映像などで見ることがあると思いますが、近い距離からワンバウンドを投げて体を使って止める練習、キャッチしてから素早くステップしてスローイングする練習などを繰り返します。

そうなると、どうしてもバッティング練習が足りないと感じるので、小走りでマシンの前へ移動して打ちます。コーチやスタッフから「早く上がれよ~」なんて声をかけられることもあるのですが、こんな感じなので上がれるはずがありません。

宿舎では18時から夕食だったのですが、その18時に間に合うのはキャンプを通じて2~3回しかありません。どうせシャワー浴びずに帰っても間に合わないので、だったら、シャワー浴びて帰ろうと(笑)。

遅れて夕食をとって、19時半から監督のミーティングが始まって、それが終わったら夜間練習です。こうしたハードなキャンプが終わっても、修行中の二軍選手はシーズン中も練習を重ねて、ようやくキャッチャーとして一人前になっていきます。

高卒1年目でスタメンとなったロッテ・松川虎生はすごい

それを考えると、2022年に高卒新人ながら開幕戦からスタメンでマスクをかぶった、ロッテの松川虎生選手は大したものです。近年では谷繁元信さんが高卒新人から一軍にいましたが、松川くんのように試合には出ていなかったですからね。

あくまで推測ですが、どのくらいできるか見てみたいという感じでキャンプに連れて行ったと思います。でも、やらせてみたら「意外といけるじゃん」と。それが「いいじゃん」「いいじゃん」と、どんどん高評価が増えていって「使ってみようか」になったのではないでしょうか。

次回は、松川選手ほどは順調ではなかったものの、一軍の試合に出られるようになった時代の話をすることにします。


プロフィール
野口 寿浩(のぐち としひろ)
1971年生まれ。千葉県習志野市出身。1989年ドラフト外でヤクルトスワローズに入団。二軍で結果を残すも、同期に古田敦也がいたため、二番手捕手としてプレー。日本ハムファイターズへ移籍後すぐに正捕手の座を獲得し、同年のオールスターゲームに出場。阪神へ移籍してからは矢野燿大とポジションを争うこととなり再度、二番手捕手としてプレー。2009年横浜ベイスターズへ移籍。2010年引退。引退後は野球教室を開設する傍ら、野村監督の下で培った知識や経験を基に、独自の切り口を持った解説が好評を得ている。