サブキャラにもその子の魅力があるように描く

――ミナモト先生の作品の共通点だと勝手に思っているんですが、一般的に呼ばれているモブキャラっていう存在が、ミナモト先生の作品には登場しないように感じているんです。

ミナモト わぁ、それはすごくうれしい感想ですね。

 

――1巻の表紙ひとつ取ってもそうですが、この作品中では名前の出てこない人たち、1人1人にもちゃんと人生があるような感じがしていて、それは意識されているのかな、ということをお聞きしたかったんです。

ミナモト そうですね。意識っていうか、もう癖なんですけど、メインキャラ以外のいわゆるサブキャラ的な子たちにも、すごいなんかこうエピソードとか、なんというかその子の魅力とかも入れたくなっちゃうんです。それこそ家族だったりとか、ファンの子たちだったりとか、専門学校の同級生だったりとか、いろんな子をその場限りにはしたくないって気持ちがすごい強くて。だから、意識というよりかは、自分が好きでそうしてるところなので、気づいてもらえて本当に光栄です。

――先生の生活もそういう感じなんだろうなっていう気がしました。だから、すごくいろんな感情を真正面で受けやすいんじゃないかって。

ミナモト 恐縮です。確かに自分自身がいろいろ気にしいで、ときにネガティブにもなってしまうぶん、人が考えてることとかをいちいち気になっちゃうタイプなんですよね。それが作品にも反映されているだろうなと思います。

自分の本音を出せる漫画を仕事にしたかった

――ここからは、そもそものお話をお伺いしたいのですが、漫画家になろうと思ったきっかけをお聞かせいただいてもいいですか?

ミナモト 絵を描くのは好きだったんですけど、もともと夢とかやりたいことって全くなかったんです。それで高校を卒業するとき、進路を決めなきゃいけないってときに、本当に何もしたくなくって。大学にすらあんまり行きたくなくって、とりあえずいったん考える時間が欲しくなっちゃったんです。絵を描くのだけはすごい好きだったので、漫画の専門学校に行こうって決めたんですよ。専門学校だったら、2年間のんびりとやりたいことを考えられるかなと思って行ったんです。

――じゃあ、こう漫画家になってやるぞ! みたいな感じではなかったんですね。

ミナモト はい。ただ、入学して、学校の課題でオリジナルの漫画を描いていくうちに、これを仕事にしたいとすごく感じるようになりました。

――へえ! じゃあ、そこまでは漫画の勉強とか、絵を描くのは好きだけど漫画をしっかり描くって感じではなかったと。

ミナモト うーん、スクリーントーンとかを使ったことはあったんですけど、漫画家っていうのは別になかったんですよね。本当に趣味で描いてるのが好きっていう感じだったので。

――これを仕事にしたい! と思ったのは、楽しかったとか、褒められたからとか、何かきっかけがあったんですか?

ミナモト いえ、他人の評価というよりか、自分の居場所が見つかった、に近いかもしれません。専門に入るまでは、既存の漫画のモノマネしか描いてなかっったんですけど、初めての課題で、1ページのオリジナルの漫画を描くことになったんです。自分は中学のときにゲイだって気づいて、当然ながら誰にも打ち明けることもないし、一生誰にも本音は言えないんだろうな、と心を閉ざしてたんですね。

でも、自分が描いた1ページのオリジナルの漫画の中では本音が言えたような気がしたんです。周りからは明るいと言われ続けていたんですが、初めて描いたのは主人公が自殺する話。でも、それを客観的に読み返したときに、すごくスッキリした気持ちになったんです。もちろん、自分の中にリアルな自殺願望があったわけではなかったんですけど、苦しさを吐き出せる場所が欲しかったんだな、絶対これを仕事にしたいな、と思ったのがきっかけですね。