部屋に入ってきた男の手が胸に伸びてきて・・・

“なにするの…!?”

そのあと、男の手が胸に伸びてくると、両乳首を両手で同時に、コリコリコリっ、コリコリコリっ。動けないでいると、コリコリコリっ、コリコリコリっ。

“大きな声を出したら殺されるかも……”

そう思っているので、抵抗するのも騒ぐのも怖くて、体は固まって動けない。

すると、ずっと男は、

コリコリコリっ、コリコリコリっ。

コリコリコリっ、コリコリコリっ。

ずっといじり続ける。

“どうしよう! どうしよう!”

……コリコリコリっ、コリコリコリっ。

すると、今度は乳首の周りをゆっくりと揉み始めた。

“どうしよう……”

体が硬直し、怯えパニックになっているのをよそに、男はお構いなしに、無言で、ゆっくりゆっくりと揉み続ける。

どれくらい経っただろうか。不意に男が体を起こし、くるっと反対を向くと、ユニットバスから出て行った。

そのあと、部屋のドアがガチャッと開く音がした。

男は出ていったのだ。

廊下の防犯カメラの映像を確認すると・・・

そこで、我に返った。

すぐに服を着てフロントへ駆け込んだ。

「すみません! 知らない人が部屋に入ってきて…!」

フロントの人も、私の必死の形相を見て、ただごとではないと察し、すぐに警察へ連絡するという流れになった。

警察が来るまでのあいだ、ホテルの方と一緒に廊下の防犯カメラの映像を確認する。

でも、おかしい。

男が彼女の部屋に入ってきた時間、彼女の部屋、ドアも開いてなければ、誰も入ってきていないのだ。

なにより、信じられなかったのは、そのホテルは全部屋がオートロックだったのだ。

鍵は開いていなかった……。

男が入ってきたとき、“オートロックじゃなかったんだ”と思った、私の最初の思い込みは間違ってなかったんだ。

“じゃあ、あれって、わたしの見間違え!? 妄想!? えっ、妄想!? 妄想なの!? 妄想かも……”

自信がなくなってきた。

妄想かもしれない、そう思った。

半身浴しながら読んでいたのがエロ漫画だからだ。

▲欲求不満が溜まりすぎちゃったのかな… イラスト:わたなべともみ

“私……やば”

ずっと彼氏もいなくて、性的な行為は基本的にいつも一人。

そういう漫画が好きで、よく読んでいたのだが、ついに具現化させてしまったのだ。

妄想が度を越してしまったのかもしれない。

“欲求不満が溜まりすぎちゃったのかな……”

ホテルの方にも、遅れて到着した警察の方にも平謝りして、とりあえず勘違いということで納得してもらって、自室に戻ることにした。

部屋に入って、ベッドに腰をおろして、ふぅとため息をつく。いまだに胸がドキドキする。

ちょっと落ち着いたら、あることに気づく。

自分の二の腕に、グッと掴まれたような感覚が残っていることに。

あれは妄想じゃなかったの…? そんなわけがない。いや、これはきっと妄想、妄想だ。

そう願いながら袖をまくると、両腕に、ギュッとされた手の跡が残っていた。

“妄想とかではなく、エロいことを考えすぎていて、エロい何かが寄ってきてしまったのかもしれない”

と彼女は思った、そして……

“もし、こうして感覚の余韻を残すのなら、腕ではなく、乳首がよかったな”

『ありがとう ぁみの艶怪談』は、次回12/24(土)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
ぁみ(ありがとう)
日本最大級の怪談エンタメLIVE「渋谷怪談夜会」を渋谷O-EASTで毎年主宰。2017年に初の全国ツアーを全公演 SOLDOUTさせ、以後毎年開催中。YouTube「怪談ぁみ語」、ニコ生「渋谷怪談夜会ch」なども人気。人気書籍「レイワ怪談」シリーズをはじめ書籍の執筆や原作提供を行う。司会進行・MC としての活動も多く年間約100 本のイベントや番組にMC出演している。怪談家ぁみオフィシャルサイト、Twitter:@arigato_ami