ロシアの核に対するアメリカの態度

桜林 バイデンさんは「潜水艦から発射する低出力の核弾頭開発をやめる」とも言っていますね。逆に言うと、規模が小さいと言いながらも、ロシアが戦術核を使用した際に、アメリカが何もレスポンスないしリアクションをしないということになったら、それはそれで、また大きい問題になるのではないでしょうか。

小野田(空) まさにそこが論点ですね。トランプ政権のときに、核体勢の見直しがありました。その際に低収量の核弾頭、つまり小さな核弾頭を開発すると決めたわけです。バイデン大統領は、その決定を凍結して後退させつつあります。それでアメリカ国内で議論が起きている。議論するのはいいのですが、そのあいだにロシアに核を使われてしまったら、どうするのでしょうか。

桜林 逆に、ロシアにとっては、アメリカが議論しているあいだがチャンスでしょうし。

伊藤(海) トランプ大統領は、核を搭載した潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)の開発を決めましたが、バイデン大統領はこれをキャンセルしました。一方で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「トライデント2」は、トランプ政権下のNPR(核戦略の見直し)にもとづき、低出力の核弾頭を搭載できるように改修されています。

つまりバイデン政権は、SLCMという戦術核兵器の開発を見送っても、低出力核兵器を搭載し、正確な攻撃が可能なSLBMがあれば、使用が前提であるロシアの戦術核兵器とのバランスはとれると判断したのでしょう。

▲潜航中の潜水艦から発射されるトライデント2 出典:パブリックドメイン / Wikimedia Commons

小野田(空) アメリカの核兵器の状況は、対中国においてもすごく影響がある話です。ということは、日本にも非常に大きな影響があるということなんですね。核の傘、つまりアメリカの核が抑止になっているということを、もうちょっと仔細に見つめていき、日本の防衛のために、核の傘の質というものをアメリカときちんと議論していかなければいけない。ロシアの核兵器使用の議論は、日本に大きな影響を及ぼしているのです。