平成唯一の三冠王となった松中信彦
平成唯一の三冠王といえば松中信彦だ。三冠王を達成した2004年の成績は、打率.358、44本塁打、120打点と圧巻の数字を残した。さらに、スラッガーの証でもある長打率に関しては、キャリア最高の.715を記録しており、2000年代中盤において間違いなく最高の打者だったに違いない。
松中の特徴としては、やはり内角の打ち方である。本来であれば、ファールゾーンに切れていくはずだが、切れずにスタンドインする確率が高かった。この打ち方は、バットを上からボールの内側へ入れていき、さらにスライス回転をかける、という高等技術が隠されている。
また、当時はテラスがなかった福岡ドームで、松坂大輔からバットを折りながらスタンドに放り込んだ1発や1試合3本のホームランを放つなど、パワーはもちろんのこと、技術の面でも超一流の域に達していた。
令和初の三冠王と本塁打記録を塗り替えた村上宗隆
今シーズン令和初の三冠王を達成したのが村上宗隆だ。年齢から見ると、大卒1年目の選手が打率.318、56本塁打、134打点、OPS1.168を記録したことになる。
このなかでも特に注目したいのは打点だ。134打点を記録している村上の4番打者としての資質は、とても高いと見ている。4番打者は、勝負を避けられることやチームプレーの意識により、出塁率が高くなる打者は多い。その点は他の選手と共通事項としてある。
しかし村上は、その状況の中でも、自らの打撃でチームを勝利に導くことに重点を置いた打撃スタイルで130打点以上を記録した。これは個人的な考察であるが、4番打者である限り、チームの勝利に結びつく打点は最重要のポイントとして見ている。
さらに、4番打者として必要な要素として、要所で打撃スタイルを変えて、軽打に切り替える器用さも兼ね備えていることだ。要所でのスタイルの変化が、勝利に導く殊勲打を増やしたため、成績や数字以上にチームから頼られる選手になったのだろう。さらに、長打率も.710を記録。文句なしの成績でチームを2連覇に導いた。WBCでも日本代表の主砲として期待される。
21世紀に活躍したその他のスラッガーは?
まずは広島や阪神で活躍した金本知憲だ。飛ぶボールの全盛期だったが、広い甲子園球場を本拠地としながら、左打者として40本塁打を記録。勝負強さも兼ね備えていることから、毎年100打点以上または100打点近い成績を残していた。キャリアハイの2005年は、打撃3部門全てで3位以内に入る活躍を見せて、シーズンMVPを獲得した。
本塁打王の獲得はなかったものの、本塁打率は18.72を記録。通算本塁打は、476本塁打を記録しており、歴代10位。さらに、走塁意識が高く、足も速かったことから、広島時代にトリプルスリーを達成したことはもちろんのこと、晩年にかけて見ても併殺打も少ない選手だった。
次は西武ライオンズの中村剛也。今の選手のように、打率を残しながら、本塁打を打っていくスタイルではなく、昔ながらのホームランアーティストのタイプの打者で、歴代3位となる6度の本塁打王を獲得。本塁打率に関しても14.74を記録している。通算本塁打に関しては、474本塁打を記録しており、歴代14位だ。打点王も4度獲得しており、頼れる打者なのがわかる。
中村紀洋や小久保裕紀、小笠原道大、和田一浩、阿部慎之助、現役でいえば柳田悠岐、山田哲人も代表するスラッガーと言っていいだろう。中村紀と小久保、阿部に関しては400本塁打を記録。小笠原や和田、柳田、山田は安定して3割30本塁打を記録しており、パワーがありながら確実性も兼ね備えている。
さらに、柳田と山田に関しては、金本と同様にトリプルスリーも達成している。スラッガーという括りでも、アーティストや勝負強さ、確実性、走れるなどを兼ね備えているなど、さまざまなタイプがいることがわかる。
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こうして見ていくと、NPBで圧倒的な活躍を見せてMLBに挑戦し、日本人スラッガーが世界で通用することを証明してくれたのは松井秀喜だろう。
今シーズン三冠王を獲得した村上宗隆は、今後どれだけ本塁打を量産できるかが、とても楽しみである。今シーズンのような活躍を来季以降もみせられたら、スラッガーとしての評価もさらに揺るぎないものになっていく。
そして、MLBで二刀流として圧倒的な成績を残す大谷翔平。世界のトップ・オブ・トップのリーグで本塁打王争いを演じた。近い将来の本塁打王の獲得が大きく期待される。獲得できれば文句なしに21世紀の最強スラッガーと言えるだろう。