年の瀬となる今だから振り返りたい2022年の思い出。ニュースクランチに登場していただいた方たちに2022年のベストブック、もしくはベストムービーを紹介してもらう「2022 My Best」。
建築漫画家として、古代メソポタミア浪漫譚『バベルの設計士』(実業之日本社)を発売している芦藻彬さんに、今年のベストブックを3冊選んでいただきました。
『スターメイカー』オラフ・ステープルドン
〇オラフ・ステープルドン『スターメイカー』|筑摩書房
こんな作品が読みたいと思い続けていたSFに、ついに出会うことができました。遠未来、宇宙、焦がれ続ける遠い場所へ連れて行ってくれるのは、人間の想像力だけなんだと。そんな感覚を呼び起こしてくれる作品です。
さらに驚くべきは、この作品が1937年のイギリスで執筆され、2021年末に日本語で全面解訳・文庫化されたことです。時と国を超えて受け継がれる人類の想像力、愛の詰まった作品の目撃者に、ぜひあなたも加わってください。
『あなたはブンちゃんの恋』宮崎夏次系
〇あなたはブンちゃんの恋|モーニング
『培養肉くん』という作品を読んで、上記の『スターメイカー』に近い驚嘆と共感を覚えて以来、宮崎夏次系先生の大ファンです。先生の最長連載作品となった今作は、不条理性と共感性が極限まで手を取り合い、巨大な感情を叩きつけられ続けるB I Gな作品でした。
結末が読めないなか、最終巻を読んだ日は「やはり、宮崎先生はこのテーマに戻ってきてくださるんだ」と、1時間ほど放心してしまいました。宮崎先生の作品のように、生きたい。。
『うみべのストーブ』大白小蟹
〇『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』|トーチ
上記2作品と対照的に、不条理性は形を潜め、道端で美しい小石を見つけたときのような幸福を感じさせてくれる短編集でした。一方で、図らずも先に挙げた不条理な2作品のなかに見つけた「光るもの」と似たものを感じたことに驚きました。離れすぎて触れられないものと、身近すぎて気づけないものとは案外差がないものかもしれない……?
やはり、日常に持ち帰ることのできる作品が好きだし、そういう作品を作っていきたいと感じました。