作品を見てもらおうと泊まり込みで宣伝するも・・・

見てもらえれば、面白さがわかるはず。最初に小沢たちがしたのは、社内試写が行われる松竹本社でのチラシ配りだった。

「松竹の社員の人すら、俺らの映画のことをまるで知らなかった。相手にもされてない。出勤前の入り口で社員に『試写をやってるから、見に来てください』って声をかけて1週間。社員は誰も見に来なかったけど、お掃除のおばちゃんが来てくれてね。“もっと頑張らなきゃ”って、寅さんのポスターにチラシを貼ったら、松竹の社長にひどく怒られてさ(笑)」

そこから始まったキャンペーンは、さらに9ヶ月を要した。宣伝バスで全国を回り、青森ではバスが雪の中でスタックして、みんなで押して動かした。懸命のプロモーションにテレビの取材も入り、誰もがこの映画は当たるだろうと大船に乗った気持ちでいた。

▲見てもらえば面白さは伝わると地道に全国で宣伝活動に励んだ

「最初の特別興行は800円で1週間、上映回数48回。それには割と入ったんだよ。劇場にほぼ寝泊まりして、毎回、舞台挨拶をやった。挨拶が終わったら、外でチラシを配って、上映が終わる頃に今度は入り口に立って、見てくれたお客さんみんなと握手する。上映期間中、ずっと繰り返した。朝の上映中に200枚のポスターを、新宿駅の東口から(劇場館である)新宿ピカデリーまでの道のりに貼ってね。

サブナードの地下は第三セクターの管理下だったから、『勝手なことするな。昼までに剥がせ』って呼び出されて、怒られてね。ちょうど奥山さんから『差し入れは何がいい?』って電話がかかってきたから、『ポスターを剥がすヘラを20本ほどお願いします』って言ったら、あの人、真面目だから東急ハンズでちゃんと買ってきてくれて(笑)。みんなで懸命に剥がしたよ」

ちなみに、ちゃんと事情を話し、第三セクターの偉い人と和解。後々、映画監督デビュー作『殺し屋&嘘つき娘』(1997)のポスターを貼らせてもらったそうである。

「『SCORE』は特別興行が終わると、昼間の回なんて10人も客が入ってないときがあって、キャストが道行く人に声をかけては劇場に人を入れたりして、それは大変だった(笑)。その時期、『コンゴ』っていうハリウッド映画がかかってたんだけど、モギリのおばちゃんが『そっちより面白い映画がありますよ』って、俺らのチケットを売ってくれたり。

忙しそうだからって手伝ったポップコーン売場のお姉さんが、仕事終わりに自腹で見に来てくれたりね。そういう努力をしたのは俺らの思いで、あれは間違ってなかった。だけど、興行的には負けた。あの悔しさがずっとある」

話題になった。業界では評価され、賞も獲った。でも、興行成績は振るわなかった。以来、Vシネはやろうとも、劇場用映画では主演映画は撮っていない。

▲『SCORE』での経験は今でも鮮明に記憶している

≫≫≫ 明日公開の後編へ続く


最新作『BAD CITY』
 
■あらすじ
ある夜、「犯罪都市」の異名を持つ開港市に縄張りをもつ桜田組の組長が死体となって発見された。それは、韓国マフィアの仕業であった。その韓国マフィアの幹部・金数義(山口祥行)が密談していたのは、巨大財閥である五条財閥の会長・五条亘(リリー・フランキー)。五条が無罪となった判決には必ず裏があると踏んでいる検察庁検事長の平山健司(加藤雅也)は、公安0課の小泉香(壇蜜)を使い、秘密裏に特捜班を結成。メンバーは、熊本(勝矢)、西崎(三元雅芸)、野原(坂ノ上茜)、そしてもう一人...ある事件を起こした容疑で拘置所に勾留されている元強行犯警部・虎田誠(小沢仁志)である。果たして虎田たち特捜班は、五条を検挙することができるのか?「真の悪の存在」や「裏切り者」は誰なのか?欲望が渦を巻くこの街で繰り広げられる、欲望の果てに見える景色とは―。

■出演
小沢仁志 坂ノ上茜 勝矢 三元雅芸 中野英雄 小沢和義 永倉大輔 山口祥行 本宮泰風 波岡一喜 TAK∴ 壇 蜜 加藤雅也 かたせ梨乃 リリー・フランキー

製作総指揮・脚本:OZAWA × 監督・アクション監督:園村健介
主題歌:クレイジーケンバンド「こわもて」(doublejoy international/UNIVERSAL SIGMA)
制作プロダクション:ソリッドフィーチャー 配給・宣伝:渋谷プロダクション
© 2022「BAD CITY」製作委員会
117分/シネマスコープ/DCP/5.1ch

2023年1月20日(金)より新宿ピカデリー他にて公開
公式サイト:映画「BAD CITY」
Twitter:@BADCITYMOVIE
Facebook:バッドシティ
〇映画『BAD CITY』予告編
プロフィール
 
小沢 仁志(おざわ・ひとし)
1962年6月19日生まれ、東京都出身。1984年、TBSドラマ「スクール☆ウォーズ」で本格的に俳優デビュー。以後、『SCORE』『太陽が弾ける日』など、多くの映画やドラマで強面の個性を発揮。スタントマンをほとんど使わないアクション俳優としても知られている。「顔面凶器」「Vシネマの帝王」などの異名を持ち、その出で立ちから数々の悪役を好演。OZAWA名義で監督や企画、脚本をも担当。近年では活動の場をバラエティ、YouTubeなども始め、更なる活躍が今注目される存在。Instagram:ozawa_hitoshi、YouTube:笑う小沢と怒れる仁志