参謀の育成まで…球界屈指の投手マネジメント術

現代のプロ野球では、オリックスを日本一に導いた中嶋聡氏、ヤクルトをセ・リーグ2連覇に導いた高津臣吾氏といった監督が投手陣のマネジメントをする手腕に長けている。

その両監督と引けを取らないのが吉井理人氏だ。

現役時代はセパ両リーグからメジャーリーグまで経験。現役終盤にはメジャーリーグで目の当たりにしたロジャー・クレメンスを参考にするなど、飽くなき探求心でボールを投げ続けた。

さらに、筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士前期課程・体育学専攻野球コーチング論研究室の学生として、野球コーチングを学ぶなど熱心な勉強家。

引退後はコーチとしての実績も優秀で、これまでにダルビッシュ有や大谷翔平、佐々木朗希など、球界を代表する投手をマネジメントをしてきた。

この3投手について吉井氏は「佐々木朗希は1年目のルーキーから見てるんですけど、ダルビッシュ、大谷はちょっと仕上がってる3~4年目から見ていて、始まりの始まりはわからないんですけど……」と前置きしたうえで「3人ともに言えるのは自分を知る、自分の見つめ方がすごくうまかった。自分がどうなっているのか把握するのが、皆うまかったです。朗希は1年目からそう。言うこともしっかりしてるし。客観的に自分の見つめ方がうまいというか、できていましたね」と3人の共通点をコメントをしている。

吉井氏のマネジメント術は、時代に合った合理主義であり、教えるのではなく自分に頭で考えるように質問するなど、選手たちに自発性を掲げている。これは、伝統が浅い球団だからこそ合ったマネジメント術といっても過言ではない。

2008年から2012年に日本ハムファイターズで投手コーチを務める。2008〜2009年は一軍投手コーチに就任して、ダルビッシュをはじめとする投手陣をマネジメントした。

その後、解説時代やコーチをしながら大学院で学んで、指導者としてさらにレベルアップ。2015年には福岡ソフトバンクの投手コーチに就任。第二先発として千賀滉大を目にかけるなどの運用力で日本一に貢献した。

その後、2016年からは再び日本ハムのコーチに復帰。シーズン途中でクローザーとして不調だった増井浩俊や、先発の特性を感じられた高梨裕稔を先発に移す。

その結果、もともと先発ローテーションだった有原航平や高梨、増井が二桁勝利を記録。大谷を含め4人の計算できる先発陣がいたことになる。これを見るとわかるように、この年ぐらいから150km/h以上のストレートとフォークを中心とするピッチャーをうまく活かした。

さらに、ブルペン陣を見ても、クリス・マーティンや最優秀中継ぎ賞の宮西尚生、谷元圭介の防御率1~2点台投手を中心に、アンソニー・バースや井口和朋などを起用。

ポストシーズンでは、ソフトバンク時代と同様に、第二先発を上手に活用したことや、2戦目で打ちこまれたマーティンから起用法を切り替えて、調子が良かったバースや谷元(いずれもクライマックスシリーズでは防御率0.00)を中心にブルペン陣を回した。