驚くほど共通点が多いアイドルとプロレスラー
いまやアイドルの仕事がメインになってしまった僕ではあるが、その原点はこの2人のアイドルレスラーにある、といっても過言ではない。
そもそも工藤めぐみはヒールとしてFMWに参戦したが、会場人気が自然と高まり、「全女退団後に保育士さんをやっていた」という男心をくすぐりまくるギャップ萌え要素も加わり、絶大なる人気を誇った。
まさに“ピープルズアイドルレスラー”なのだが、会社も本人もアイドル売りをするつもりがまったくなかったのに、アイドル人気が沸騰してしまうという極めてレアなパターンだったため、ある意味、報道する側も自由度が高かった。
一方の府川唯未はデビューしてすぐに大ケガをし、そこから1年半近く欠場するという状況に陥ってしまうが、欠場中のセコンド姿やちょっとダボっとしたレフェリーシャツを着て試合を裁く仕草が「かわいい」と噂になり、ディープなファンのあいだでは試合を見る前から期待感が高まっていた。
週刊プロレスとしては、あくまでもプロレスラーとして評価し、試合内容に即した扱い方をすべきだったのだが、「アイドル性」に商品価値というか、女子プロレス全体を浮揚させる可能性を感じた僕は、かなりゲリラ的なやり方でページを組みまくった。やはり府川は「レスラーとしての実力がまだまだだったので……」と当時の戸惑いを口にしたが、『憧夢超女大戦 25年目の真実』でも書いたように、「東京ドーム大会の余韻で女子プロレス人気が続いているうちに次世代のスターを生みださないとヤバい」という危機感が報じる側にはあったので、これまでと違うやり方を模索しなくてはいけなかったし、それに適合する逸材として府川はライバル誌も含めて「推し」案件となった。
ここで体験したことを、のちに僕はアイドルの仕事で活かしてきた。本当に「女子プロレス」と「アイドル」は共通点が多いし、その両方の要素を兼ね備えたアイドルレスラーは最上級の存在だった、と思う。
僕にとって2人を取材し、ページを作ってきた時代はまさに青春そのものだったし(実際、年齢的にも20代前半から中盤にかけてのことである)、四半世紀が過ぎても、こうして一緒にステージに立てるのは本当にありがたいこと。若気の至りで「それはやりすぎだろう」と物議を醸すページを作ってしまったことも多々あるが、それすらもトークのネタとして当の本人と笑って語れるのだから、それはそれでアリなのだろう。
JWP対FMWの対抗戦は「アントニオ猪木vsジャイアント馬場」
実際に闘っていたレスラーと、試合を組むフロント、そしてそれを報じる記者。
まったく別の立ち位置で対抗戦ブームに関わってきたメンバーによるクロストークは、思わぬ方向に話が転がっていったりもした。
ヤマモは工藤めぐみを高く評価していたが、JWPのリングでFMWとの対抗戦を組むことを「それはちょっと違う」と工藤の引退ロードまであえてしてこなかった、という。
個人的には、もっと絡んでほしかった。
JWPの前身となるジャパン女子は、旗揚げ時に新日本プロレスの鬼軍曹・山本小鉄氏の指導を受けている。1期生のミスA(のちのダイナマイト関西)や尾崎魔弓、キューティー鈴木らはまさにアントニオ猪木の“門下生”ということになる。
逆にFMWでは元・全日本プロレスのターザン後藤が女子部を管轄していた。つまり、FMW女子はジャイアント馬場の“孫弟子”にあたるわけだ。
JWP対FMWの対抗戦は「アントニオ猪木vsジャイアント馬場」の遺伝子対決になるわけで、何度もぶつかっていけば、女子プロレスの枠を超えた“なにか”が生まれるんじゃないか、と密かに期待していた。
ところがこの日、工藤めぐみの口から「私たちも後藤さんから指導は受けましたけど、全女で学んだ基礎を貫きました」との証言が飛び出し、25年来の妄想は崩壊した。こういった「いまだから話せる逸話」もトークショーの醍醐味。本当にとてもここでは書けないような極上の秘話がいくつも飛び交いまくったので、次の機会があったら、ぜひ現場に足を運んでいただきたい。
トークだけではなく、工藤めぐみ&府川唯未との夢の3ショットが撮れたり、ふたりの寄せ書きサインの入った激レアな『憧夢超女大戦 25年目の真実』が来場者全員にプレゼントされたりとお得すぎるイベントとなったが、それは2人がいまでも「アイドルレスラー」としての神秘性を保っていてくれているから成立する世界。だからプロレスって素晴らしいのである!
闘道館では4月5日(日)に『記憶の懸け橋~俺とお前の25年を問う!~』と銘打たれたトークイベントを開催。
これは週刊プロレスが主催した東京ドームでのオールスター戦『夢の懸け橋』から25年が経ったことを機に開催されるもので、名物編集長だったターザン山本が当時の週プロスタッフや週刊ゴング、東スポの記者、さらにはあの日参戦したレスラーたちと30分1本勝負のトークバトルを「10番勝負」として敢行。今回に続き、小島和宏記者の参戦も決定している。
あのころのプロレスが大好きだった世代には、1秒たりとも見逃せないトータル6時間超えの耐久イベント(さすがに途中に休憩アリ!)。参加費は4200円(当日受付の場合は4500円)。
お申込み方法は、闘道館のホームページ(https://www.toudoukan.com/)を確認してください。