世界的な水準が上がった2010年以降の国際大会
2010年代から国際大会に対する各国の価値観が変わった。
2013年はドミニカ共和国、2017年にはアメリカがWBCで優勝した。メジャーリーガーを揃える2強が優勝したことにより、WBCという大会の価値が高まったのではないだろうか。
この大会あたりから、強豪と言われていたキューバや韓国がWBCでは一次ラウンド敗退を喫している。その代わりにオランダが台頭を見せ、2013と2017年のWBCではベスト4に入った。
その他を見ても、2017年のWBCではイスラエルが二次ラウンドに進出し、コロンビアは同大会で優勝したアメリカに健闘した。このように、WBC自体が大会を重ねるごとに全体的な力の水準が上がっていることがわかる。
この結果により、メジャーリーガーが参加しないプレミア12や五輪にも大きな影響を与えた。
こちらの大会に関しては、メジャーリーグを目指す若手選手や、第一線から退きながらも這いあがろうとする元メジャーリーガーが参加。さらに、実質4Aのレベルと言われているNPBに在籍している外国人も多く出場している。
世界全体が野球の国際大会に意欲的になったことがわかる。2000年代にWBCや五輪でトップを張っていたキューバや韓国は力負けすることが増え、WBCに関しては決勝トーナメントに進出できない状況にまでなっている。
一番直近の国際大会である東京五輪に関しても、キューバはアメリカ大陸予選で敗退。韓国はNPBで活躍するC.C.メルセデスや、メジャーで本塁打王を獲得したホセ・バティスタ、メルキー・カブレラ、ファン・フランシスコを擁するドミニカ共和国に敗れてメダルを逃した。逆にドミニカ共和国は、五輪の野球で初のメダル(銅)を獲得した。
日本と決勝で対戦したアメリカは、NPBで活躍したタイラー・オースティンやスコット・マクガフ、ニック・マルティネスを中心に2017年WBCのメンバーだったデビッド・ロバートソン、2015年に35本塁打を記録したトッド・フレイジャーなどを選出した。
メジャーリーガーがいない大会とはいえ、ここまで世界の野球に対する意欲が向上していた東京五輪で金メダルを獲得したことは、非常に価値が高い。
世界的に見ても投手力のレベルが高い日本
日本代表のレベルで見ると、各投手を実力順に並べてもレベルに差がほとんどないことが、他国と比較して強みだ。
他国は先発やクローザーに力のある投手を起用し、2番手3番手のレベルはあまり高くないこともあるため、中盤に試合が動く場面がある。日本は水準以上の投手を揃えていることから、調子が悪ければすぐに替えることができるのも強みだろう。
2013年のWBCでは、ドミニカ共和国がリリーフ投手を多めに選出して優勝したが、日本の投手も負けていない。
2017年WBCは大谷翔平の辞退があったなかで、先発から中継ぎまでフル回転した千賀滉大や平野佳寿、増井浩俊といった強度のある速球とフォークを武器にした投手が活躍を見せた。さらに、秋吉亮や宮西尚生、牧田和久を中心に回したのが非常に効果的だった。
2019年のプレミア12では、甲斐野央や山﨑康晃、大竹寛、嘉弥真新也、田口麗斗、中川皓太が無失点を記録。そこに今では、先発の柱である山本由伸がリリーフ陣にいたため、圧倒的な投手陣だった。
東京五輪も、千賀や大野雄大、岩崎優、山﨑、伊藤大海は無失点で、そこにフル回転した栗林良吏がいた。
どの大会も、そのときに高いパフォーマンスが見込める異なる投手をここまで揃えられるのは、世界トップクラスの投手陣の層の厚さがあってこそ。また、日本人投手は昔から決め球として、フォークやスプリットを投げることが多い。肘への負担が比較的少ないチェンジアップなどがメジャーリーグでも主流となっているとはいえ、スプリットをこれだけ扱えるのは世界で日本のみだろう。
落ちるボールを投げられる投手は、野茂英雄や佐々木主浩、上原浩治、黒田博樹、岩隈久志、田中将大、大谷翔平、平野佳寿らが活躍した。
さらに、ダルビッシュ有や前田健太も縦の変化球を渡米後に強化した。効果的なボールだからだ。そのため、千賀や山本由伸、栗林良吏、佐々木朗希などはメジャーリーガー相手でも対応できる可能性は高い。
ただ、2010年代以降の国際大会で唯一優勝できていないのがWBCだ。その状況で2023年の大会は非常に注目される大会だろう。
メジャーリーガーでもトップクラスの大谷やダルビッシュを招集し、アメリカやドミニカ共和国が盤石の体制のなかで、2009年大会以来の世界一を目指す。