国内組のみで3大会連続ベスト4に輝いた2013年WBC
第3回を迎えたWBCの開催前に侍ジャパン常設化が決定。しかし、日本プロ野球選手会が2013年WBCの不参加を全会一致となり、日本野球機構と対立してしまう。
その後、紆余曲折あり「MLB、WBCIとの関係において、選手会が要望してきたことが概ね実現していると判断できる状況が整ったこと」「NPBとの関係において、NPBが確立した権利を最大限に活かすための体制作りを確約したこと」。以上を理由に、WBC不出場決議の撤回をNPBに通知。WBCに参加することが正式に決定。前年の10月に監督が発表された。
しかし、この大会はメジャーリーガーは0人。前年日本一に輝いた巨人の選手を中心にチーム作りが行われた。そのため、これまでのWBC代表で谷間のメンバーだった大会と言ってもいいだろう。
準決勝のプエルトリコ戦は、ヤディアー・モリーナのリードや試合を動かす支配力に完全にしてやられた。プエルトリコの投手陣は、お世辞にも強力とは言えなかった。日本戦に先発したマリオ・サンティアゴは、マイナーリーグ通算で36勝51敗の成績だ。
しかし、メジャーで最高峰の頭脳と呼ばれるモリーナのリードによって抑えられた。味方投手の実力を自らのリードで最大化させたモリーナの統率力や視野の広さ、野球IQの高さなどの凄さが実感できる試合だった。
また、この大会で先発陣のなかで唯一安定していた前田健太が先発し、打者も井端弘和や内川聖一を中心に攻めた結果、力負けをしたため、ある意味で仕方のない敗戦だったと言えるだろう。
この大会を優勝したのは、全勝という見事な結果を残したドミニカ共和国。前回大会はまさかの一次ラウンド敗退を喫したが、この大会で意地をみせた。MVPには、打率.469で2本塁打を放ったロビンソン・カノが選ばれた。
ドミニカ共和国は、ベストナインに輝いたフェルナンド・ロドニーを中心に、サンティアゴ・カシーヤやケルビン・ヘレーラ、オクタビオ・ドーテル、ペドロ・ストロープなどリリーフ投手で固めた。このブルペン5枚看板は、なんと合計28イニングで失点ゼロという驚異的な仕事を果たす。
球数制球がありながら短期決戦のWBCで、小刻みな投手リレーで相手チームを抑えた。チーム防御率は参加国で唯一の1点台となる1.75を記録。チーム単位で7セーブ、11ホールドを記録しており、短期決戦で勝つためのお手本のような投手起用をしていた。
打撃陣も強力で、MVPのカノはもちろんのこと、エドウィン・エンカルナシオン、ホセ・レイエス、ネルソン・クルーズがベストナインに選ばれた。
この大会を振り返ると、前年のドタバタしていたことやメジャーリーガーなし、候補選手の世代が谷間だった点を含めると、ベスト4にまで進んだことは及第点だろう。
代表合宿で右肩の不安を訴えていた前田が、大会を通して好調を維持し、防御率0.60でベストナインに輝いた。しかし、投手陣全体を見るとチーム防御率が3.84と、お世辞にもいい成績ではなかった。そのため、前田頼りの先発陣なのは否めない状況で、リリーフ陣も牧田以外は投げてみなければわからなかった。
また野手陣で見ると、活躍した井端は開幕当初はベンチスタートだったが、チームトップの打率.556を記録してベストナインを獲得。内川も打率.348を記録し、前回大会の優勝を知る中心メンバーとして活躍した。
打線に関しても、オランダ戦のようにタイミングが合う投手には得点を積み重ねられたが、一線級の投手や見慣れない軌道に対しては、ほとんど対応ができない状況だった。
そのため、2006年や2009年大会のように、攻撃のバリエーションが感じられなかった。ただ、このような状況でもベスト4に入るのが、日本の強さを感じられる部分でもあった。
メジャーリーガーを揃えた強豪国と渡り合った2017年WBC
2017年WBCの開催前は、これまでの国際大会のなかで一番徹底した準備ができたのではないだろうか。
プレミア12終了後、2016年の開幕前に台湾と強化試合を行う。さらにシーズン終了後には、WBCを見据えてオランダとメキシコと強化試合を行った。さらに大会前の辞退者も少なかったため、本番を想定したメンバーで強化試合を行うことができた。
唯一の想定外は、投打の軸として期待されていた大谷が、日本シリーズで痛めた右足首が癒えずに辞退。柳田悠岐も肘の手術の影響で辞退した。その辞退者をうまくカバーするかのように、2009WBCの優勝を知るメジャーリーガーの青木宣親が選ばれる。
対戦相手を見ると、これまで対戦がなかったイスラエルや前回大会から成長したオランダと当たることになるなど、新しい対戦も見られた。2015年プレミア12の悔しさを晴らすかのように、日本が世界を相手に躍動する大会が始まった。
この大会で優勝したのは、準決勝で日本に勝利したアメリカだ。
野手陣はベストナインに輝いたホズマーやイエリッチをはじめ、キンズラー、A・ジョーンズ、アレナド、ポージー、スタントン、マーフィー、マッカチェン、クロフォードを揃えた。
投手陣は出場国のなかでチーム防御率1位をとなる2.15を記録。MVPに輝いたストローマン、ロアーク、ミラーなどがいた。
この大会のアメリカはイメージするような豪快さはなかったものの、勝ち進むにつれて勝負強さが出た。
一次ラウンド1戦目で、ホセ・キンタナを擁するコロンビアに苦戦。5回までリードを許す展開だったが、同点に追いついて最後はサヨナラ勝ち。2戦目も前回大会覇者のドミニカ共和国に敗れた。3戦目はカナダに快勝をして二次ラウンドに進出。1戦目のベネズエラには勝利したが、2戦目のプエルトリコには敗れた。
崖っぷちのなかでドミニカ共和国には逆転勝ちで準決勝進出を決める。準決勝の日本に勝利し、決勝のプエルトリコとの試合は、完全に仕上がっていた状態だっただろう。全体的にみても、おそらく調整のために全員を均等に出場させなければならないことや、球団側の制約があるなかで、死の組プールを勝ち抜いて優勝したのは真の強さを感じた。
日本もこの大会を通して成長を遂げた。
ベストゲームは、やはりオランダとの死闘と言ってもいい試合だ。
参加国1位の打率.321と47打点を記録したオランダ、現役メジャーリーガーを擁する野手陣と正面から渡り合う。そのオランダに対して、国際大会に強い中田翔を中心とした野手の選手層で勝った。さらに、バントや守備、継投策など細かい戦術の総合力で僅かに上回り、勝ち切った試合だったのは間違いない。
投手陣に関しても、先発の石川歩を早い段階で諦め、平野や千賀、増井など150km/h以上の速球にフォークを決め球とする投手を中心に、宮西や秋吉、牧田などを織り交ぜた小刻みな継投策も見事。
まさに球史に残る名勝負だった。
この試合以外も、キューバやイスラエルに対しては、ビハインドの展開から投手戦までバリエーション豊かに勝利していき、日本野球の強さを感じた大会となった。
野手陣は参加国1位の本塁打数と盗塁数を記録し、得点は3位、打率は5位を記録した。投手陣はチーム防御率3.05で、7位を記録していたなかで、ベストナインには先発から中継ぎまでフル回転の活躍で防御率0.82を記録した千賀が獲得した。
投打が噛み合えばメジャーリーガーがいる国とも対等に戦えることを証明した大会だった。