メール・企画書・プレゼン資料・報告書など、社会人は文章の力によって評価される機会が多い。そして、日常生活に欠かせないSNSでも「シンプルで伝わる文章」を書くことが大事だ。日本語の専門家である山口謠司氏が、短い文章を書くコツを教えてくれました。
※本記事は、山口謠司:著『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
要約力があれば文章を再構築できる
文章を短くする力を高めるために最適なのが、要約力を鍛えることです。
要約とは、文章や話の要点を短くまとめることです。不必要な情報を削除する、大事なことを見極めて文章を書くために、要約力は必要です。自分で書いた文章を読み直して要点を確認すると、再構成して短くすることも可能です。
要約力を鍛えるトレーニングをすると、文章を正しく読み取り、長い文章を短くまとめることができるようになるのです。それと同時に、論理力や読解力まで身につきます。
相手にあなたの考えを理解してもらうには、要約しながら書くことは必要不可欠です。うまく要約できていない場合、要点を得ない文章が出来上がり、伝わりづらくなります。
ビジネスでは、書類、メールやSNSなど、文章を介したコミュニケーションが多く、短くわかりやすく伝えることが求められます。
コミュニケーション時間を短縮し、相手の時間を尊重するためにも要約力は必要なのです。説明・提案・相談するときに、長い文章で伝えると、読む時間も、理解してもらう時間もかかってしまいます。
「要は、こう言いたいのです」というメッセージを相手に感じ取ってもらうコミュニケーションをすることは、社会人としてのマナーです。要約力があれば、文章だけではなく、会話の質も良くなります。
私が実際にやっているトレーニング法をご紹介していきます。ぜひ、試してみてください。
好きな本の1章を40文字にまとめてみる
本の内容をまとめてみることで、要約力は身につきます。読みっぱなしにせず、内容を自分なりに整理してみてください。
では、どういう読書をすればいいのでしょうか。
私が要約力をつけるためにやっていたのが、1章を40文字にまとめることです。本は、6章ほどの構成が多いので、1冊の内容を240文字で表現することになります。
このトレーニングを繰り返すと確実に要約力は、メキメキとついていきます。
いきなり40文字にするのは難しいかもしれません。まずは、80文字を目指してみてください。
本の内容を要約するには、2つのポイントがあります。
この章には「何が書いてあったのか?」「どんな問題提起がなされ、著者はどのような方法で解決したのか?」ということを書いてみるのです。このポイントを押さえると、要約は楽になります。
コツは、2ページに1つ、重要だと感じた文章に線を引くことです。その部分にはキーワードがある可能性が高い。
1章を読み終わったら、線を引いた文章だけを読み返してみてください。すると、要約文をつくりやすくなります。
1章は30ページほどなので、15の文章です。
「30ページ→15行→40文字」という具合に、文章を圧縮していってください。これが難しいと感じた人は、とりあえず要約のことは忘れて、一度その章の感想を書いてみましょう。
人は感想を書くことで、読んだ内容を思い出そうとします。
「なぜ、そう感じたのか。それは……」と、頭の中で、もう一度その章の記憶を引っ張り出してくるのです。
そのとき思い出したことは、強烈な印象があったということです。その章のなかで重要である可能性が高いので、それをそのまま書いてください。要約文に近いものが出来上がります。