テレ朝を辞めるときに妻に言われた3つの条件
――その後、2022年8月に独立されますが、すぐに決断はできましたか?
高橋 ずっとうっすら「辞めたいな」と思っていたなか、昨年の春ごろに家族全員コロナにかかってしまって。 めっちゃ忙しかったのにパタッと仕事せず、10日ほど家族といたんですけど、それがめっちゃ楽しかった……。そこで、“このままでいいのかしら。戻りたくないかも!”って思いました。
テレビ局は福利厚生もしっかりしているし、安定もしているんですけど、自分の仕事を振り返ったことで、7月末に辞めました。
――家族はどんな反応だったんですか?
高橋 妻には「辞めてもいいから3つ条件がある」と言われました。まずは、今まで一切言ってこなかった「いくら稼いだか言いなさい」ということ。次に、仕事がダメになったときや、変な話、死んでも対応できるように「銀行の暗証番号などを教えておきなさい」ということ。この2つは当然ですね。
最後に“一番大事なこと”として「好きなことを仕事にしようとしているのに、小じんまりとやろうとしてないか?」と。「そうじゃなくて、辞めるからにはぶち抜け!」って言われて……。抽象的ですけど、ぶち抜くつもりでやってます。
――素敵なパートナーですね! ただ、会社を辞めたあとも家族を養わなきゃいけません。茨の道も予想されましたが、それでも高橋さんを突き動かしたものはなんだったんですか?
高橋 一番デカかったのは金属バットですね。昨年、二人はM-1ラストイヤーだったんですけど、『もういっちょ』が2022年の3月末に終わることになって、オフィシャルでは関わりがなくなったんですよ。M-1ラストイヤーのタイミングで、彼らと何もしてないんだったら、“もうテレ朝いる意味ないよ”と思って。どんな結末になろうと見届けられたらいいじゃんって。
結果的に、僕はテレビ局を辞めてYouTubeチャンネル『金属バット無問題』とかいろんなコンテンツを始められたので、こんな贅沢なことはないんじゃないかなと思っています。これができただけでも、僕はなんの後悔もないですね。
――辞める報告をしたとき、金属バットさんはどんな反応だったんですか?
高橋 かしこまって「テレビ朝日を辞めることになりました」と言ったら、「なんだ、そんなことっすか」って。
――最高な方々ですね。
高橋 辞める前、友保(隼平)さんに「テレビ朝日を辞めて一緒にYouTubeをやりたい」と相談したことがあったんですよ。テレビ局のコンテンツとしてやらなければ、本人たちのやる気次第で一生続けられるし、終わる心配もない。「一生関わっていきたいから、YouTubeやりませんか?」と言ったら、「いいっすよ」って。
当時、小林(圭輔)さんがコロナで休んでいた時期だったんですけど「でも1個条件があります。ラジオの助っ人に出てほしい」と言われて……。その交換条件だけでやってくれるって、カッコ良すぎるなと思いました。
大阪の芸人とも一緒に仕事をしてみたい
――高橋さんは、これから確実に“世間に見つかるであろう芸人さん”とお仕事をされている印象があります。
高橋 もちろん超有名芸人さんと仕事できればいいですけど、僕じゃなくてもできるものなので、それよりも、ちょっと手前の方々に寄りそってあげたいな、という気持ちはあります。
――今、一緒に仕事をしてみたい芸人さんは?
高橋 大阪の人たちって物理的に仕事できないじゃないですか。フースーヤとか、にぼしいわしとか、大阪にも面白い人たちはいっぱいいるけど、やっぱり軽い気持ちで仕事は頼めない。めっちゃ仕事したいなとは思っています。
――お笑いに限らず、好きなものって閉鎖的になりがちですが、高橋さんに関しては、それがまったく感じられないような気がします。
高橋 基本的にゲラで、めっちゃ笑っちゃうんです。もう全部面白い。僕、単なるお笑いファンですから。
――今回、高橋さんのなかで「好き」や「楽しい」など、自分の気持ちを大事にされているのが伝わりました。
高橋 それで言うと、中学2年生のとき、自分の中で大きな出来事があって。その日、友達とゲラゲラ笑って遊んでいたんですけど、ふと、“これは人生のピークだ”と思ったんですよ。
これから高校受験があって、就職して、社会の歯車として一生働くことになるけど、いまは何も考えなくていいし、こんな楽しいことはもうないんだろうなって。でも、今日まで“その楽しい”が更新されてる感じなんですよね。テレ朝のときも忙しかったけど、基本的には“こんな楽しくていいの?”と思ってました。
本音で言うと“今日が続けばいい”と思っちゃうんです。だから「今やってる仕事がずっと続いてほしい」というマインドが、(芸人たちへの)愛情につながっているのかもしれません。でも、今がめっちゃ楽しいから、“明日はそろそろダメなんじゃないか”とも思ってます(笑)。
〇金属バット無問題[Youtube]