家族信託をすることで「遺言書」への抵抗感が和らぐ

家族信託の契約書には、実質的に遺言書になる部分があります。実家と管理用と入居一時金に充てる、まとまった預金を子どもに信託し、死んだらそのまま引き継げるのです。

「遺言書」は、まさに「死」のイメージです。しかし「家族信託」なら、柔らかいイメージですね。まさしく、親が生きているあいだに役立つ目的を達しながら、子どもたちに迷惑をかけず、信託が終わるとき、すなわち亡くなったときは、受託者である子どもに渡すよ……という契約書なのです。

だから、親の「遺言書」への抵抗感も相当に和らいでくるのです。そこで「家族信託」では対象にしなかった、その他の財産については、まだ対策がされていませんので、誰に相続させるのかを「遺言書」で明らかにします。

このとき、家族信託をした場合の特徴的な書き方があります。家族信託の歴史が浅いなか、専門家に任せず自分でしたのですから、万が一の不備に備え、家族信託した財産についても、遺言書で“ダメ押し”をして、もう一度書いておきます。

たとえば、親の財産が、実家の他に、少し離れたところで駐車場を持っていたとします。預金のうち、2000万円を信託財産として子ども名義にしましたが、他の預金や株券などが5000万円あったとします。

実家と2000万円の預金は家族信託で対策して、生前も財産凍結されず安心です。その他の財産は、まだ認知症ではないのですから、駐車場の売上げも、株の売買も自由に使えるようにしてあるわけです。

そこで「遺言書」で、実家と信託預金は、受託者たる長男に相続させ、駐車場の土地とその他の預金の〇〇万円は次男に、株券は長女に相続させる……などと書いておくのです。

▲家族信託をすることで「遺言書」への抵抗感が和らぐ イメージ:Luce / PIXTA

簡単で安い! 「自筆証書遺言」のつくりかた

1.法務局で必ず「保管制度」を利用する

遺言書で、普通に使われるのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。

「仲良し家族」では、愛人に全部渡したいとか、隠し子を認知したいとか、イレギュラーなことはなく、多くは簡単なので、お勧めは「自筆証書遺言」を法務局で「保管」してもらうことで大丈夫でしょう。

これで以前は必要だった相続後の裁判所での検認が不要となります。さらに便利なことは、相続が発生したあとに自動的に通知がもらえるようにもできます。これで紛失や見つからないというトラブルがなくなりました。

▲簡単で安い! 「自筆証書遺言」のつくりかた イメージ:CORA / PIXTA

費用は3900円と安いですが、遺言書の最低限の要件の「手書き・日付・押印」と本人確認をしてくれるだけです。だから、どうすると“良い遺言”になるかは、自分で考えなければなりません。けれども、簡単な質問は無料ですから、できるだけ質問することです。

2.必要書類とその後の手順

  1. 必要書類は、
    ・遺言書(財産目録や通帳コピーはホッチキス止めはしない)
    ・申請書(HPで取得する。遺言書のひな型も取得するとよい)
    ・本籍と筆頭者の記載のある住民票の写しなど・顔写真付きの免許書等の本人確認書類 
  2. 郵送でも可能ですが、質問もしたければ、平日に予約して自筆証書遺言書を提出して本人確認や形式的な確認などをしてもらいます。
  3. 法務局は画像データを保管し、保管証を受け取る。ここまでが生前の作業です。
  4. 遺言した人が亡くなったあとに、相続人らは、どこの法務局でもいいですから、行って遺言者が保管の有無を調べ、確認したら遺言書の写しをもらいます。
  5. 法務局は他の相続人などに遺言書を保管している旨の通知をします。
  6. 先に書いたように市役所での死亡通知により自動的に連絡もされます。
  7. 他の相続人などは、その通知で、各自が法務局に行き、写しをもらいます。

3.「家族信託」した場合の「自筆証書遺言」の書き方

「自筆証書遺言」は、縦書き・横書きどちらでも結構です。

▲『日本一シンプルな相続対策』より

上図がそのポイントです。パソコンで下書きをしたあと、必ず手書きします。まずは、信託した財産について書き、その他の財産についても書きます。

財産が多いとか、複雑なときは訂正ができるよう、財産目録を別にしてパソコンで書くことが認められました。通帳や登記簿謄本のコピーでもOKです。これで極端にいえば毎年の書き直しも容易になりました。