現地観戦組の二人がドイツ戦の感動を振り返る

安藤 W杯での日本代表の戦いぶりには、めちゃめちゃ興奮はしましたけど、冷静に振り返ると2大会連続のベスト16です。すがやさんはこの結果をどう捉えていますか?

すがや 前回と結果は変わらなかったですけど、もう少しだけ運があればベスト8に進出できたと思いますし、そもそも強豪国が揃う予選リーグを突破できたことも、ラッキーだったように感じているんですけど……。3年後の2026北中米W杯でも、今回のようなサッカーをやってベスト8以上を目指せるんだろうか? という不安はありますね。

安藤 すがやさんの意見は、田中碧選手(デュッセルドルフ)の話していた言葉に通じるものがあるんですけど。今回は、このサッカーをやって結果が出たけれど、4年後はどうなるのかわからないんですよね。

すがや 少ないチャンスを活かして勝ちましたし、本当にすごい試合だったと思います。ものすごく感動させてもらったんですけど「勝利の再現性があるのか?」と言われると……。ドイツ戦(2−1)は、前半はドイツにボールを回されていて、凄まじい集中力と個々の能力で、なんとか1失点で耐え忍んだ。

安藤 ドイツ代表は本当にうまかったですよね。前半は“これ以上やめてくれ……”みたいな感じでしたから。ドイツ戦の前半は、本当に長く感じた45分間でした。ワンチャンスを活かして“なんとか引き分けに持ち込めるかな……”くらいにしか思えなかったから、まさか勝つなんて。ドイツに1点先に取られた時点で、基本的にはアウトですから。 

すがや さらに恐ろしいのは、あんなに強かったドイツは、サネ(バイエルン・ミュンヘン)とか、ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)がいないという……。

安藤 ニャブリ(バイエルン・ミュンヘン)とか、ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)もすごかったし。

すがや でも、これまでの大会との違いといえば「三笘薫選手(ブライトン)が出れば、もしかしたらイケるかもしれない」というワクワク感があって、それは新鮮でしたね。

安藤 たしかに、1人の選手にここまでの期待を寄せる大会は、今までになかったですよね。誰を相手にしても抜けるドリブラー・三笘選手がベンチに控えていることで、これまでにない安心感がありました。

長すぎるアディショナルタイムを乗り越えて

すがや 先ほど、勝利の再現性という話をさせてもらいましたが、少ないチャンスを活かした後半の2得点も、不確定な要素がいろいろと重なっているんですよね。特に、浅野拓磨選手(VfLボーフム)の逆転ゴールは、怪我を乗り越えてW杯に至るまでの感動的なストーリーはあるけれど「運が味方してくれたからこそ生まれたゴール」とも言える。

FKからのリスタートを起点にして、南野拓実選手(ASモナコ)がピッチ中央で裏を取る動きをして、それに相手選手が釣られてDFラインが下がった。浅野選手はそれを確認できていなかったけど、結果的に本来ならオフサイドになるタイミングの飛び出しが運良くオンサイドになった。

トラップからシュートを決めた浅野選手の技術はすばらしいですけど、ラッキーだった部分は少なからずある。グループリーグで対戦したから勝てたのであって、決勝トーナメントで当たっていたら、勝てなかったかもしれない。勝つことはできましたけど、今振り返ると、いろいろなことを考えさせられますよね。

安藤 そうですね。「日本サッカーの発展」については、また別の切り口で考えないといけない話題ですけど、ドイツ戦に関しては“一生に一度しかない”くらいの興奮を味わえました。試合が終わったとき、いろいろな感情が込み上げてきて、僕泣いていましたからね。日本代表関連の試合で記者席で感動して泣いたことなんて、2007年のカナダUー20W杯以来なかったですから。

▲一生に一度しか味わえない興奮を味わったと教えてくれた

すがや W杯の会場は、両国のサポーターだけではなくて、中立の立場で見ている世界中の方々や、近所に住んでいてたまたまスタジアムに来ているような人もいる。試合によっては、どこか牧歌的な雰囲気が漂っていることもあるんですけど……。ドイツ戦で日本が逆転したときのスタジアムの空気感はすごいものがありましたよね。スタジアムにいて、世界中から応援されているような感じがしましたし。

日本リードのままロスタイムに突入しましたけど、7分間は長かったですよね。5年前の「ロストフの悲劇」も、ロスタイムでベルギーの勝ち越しを許していますし、試合終盤の強豪チームの強さは、これまでの大会でもイヤというほど思い知らされてきましたから。

安藤 「ロスタイムは7分」という表示を見たときに、“マジで……”と思って。試合が終わるまでは全く落ち着かなくて、本当にハラハラしましたよね。

すがや 一言で現地の評価を表すのは難しいですけど、日本のユニフォームを着てくれている外国の方が、圧倒的に増えましたよね。

安藤  アジア開催のW杯だからかもしれませんね。中東は日本企業の工場も多いですし、アジアのチームのなかで、日本代表が一番いいサッカーをしていたということもあると思いますけど。バルデラマさん(元コロンビア代表)も「日本はいいチームだね」と言ってくれたけど、リップサービスかもしれない(苦笑)。

≫≫≫ 明日公開の中編へ続く