ニュースクランチで「カカロニ・すがやの“熱”Football Watch!」を連載中の芸人カカロニ・すがやさん。昨年冬に行われた2022年カタール大会も現地で観戦し、ドイツやスペインに勝利をあげたサッカー日本代表の戦いぶりも、しっかりと目に焼き付けてきました。

今回、カタールW杯を題材にした書籍『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)を発売した安藤隆人氏との対談が実現! カタールW杯ベストゲームや現地で味わうW杯の魅力、そして2026年北中米W杯に期待することを語ってくれました。

カタールW杯で印象に残ったチーム

すがや 安藤さんがカタールW杯で印象残ったチームはどこですか?

安藤 やっぱり、ベスト4に進出したモロッコじゃないですか? 本当にドローンのように守備陣が早く戻ってきますし、システマティックでしたし。あとは、エクアドルですかね。

すがや たしかにエクアドルもよかったですよね。僕、エクアドル対オランダ(1-1)も見たんですけど、エクアドルのサッカーは面白かったですよ。アグレッシブな姿勢で強豪国を徐々に自分達のペースに飲み込んでいきました。まさに「国の威信をかけた戦い」という感じがしました。

安藤 普段、ヨーロッパのサッカーを見ていると、あまり知る機会がない選手と出会えるところも、W杯の魅力ですよね。国の威信をかけた戦いに挑む選手たちの姿を見ていると、いろいろな驚きや、さまざまな価値観を知ることができますし。

すがや ちなみに、僕はロシア大会で、モロッコ対ポルトガルの試合(0-1)を見ていて、モロッコ代表は個が強力で球際が強い。“いいサッカーをしているな”と思ったんですよ。

そのときに出演したYouTubeの配信で「もし、ハリルホジッチ監督(以下ハリル)がモロッコ代表を率いたら、強かっただろうな」と話していたら、本当にハリルがモロッコ代表の監督に就任して。案の定、ハリルが率いたらめちゃめちゃ強くなって、ハリルが解任されたら、さらに強くなったという(苦笑)。

▲カタール大会で4位となったモロッコの躍進を予言していたすがやさん

安藤 彼はすごい人なんですけどね。自分の意見を曲げない強硬な姿勢も大切だと思いますけど、日本人とはあまり相性が良くなかったかもしれない。すがやさんは、次のW杯で期待している国はありますか?

すがや 前回大会のモロッコと似た雰囲気を感じたのは、今大会ではカナダですかね。今回は予選で敗退してしまいましたけど、いいサッカーをしていましたし、2026年には自国でも試合が行われるでしょうから。

安藤 たしかに、カナダとアメリカはポテンシャルを秘めていますよね。組織作りも上手ですし、スポーツ大国でもあるので、3年後に向けて、しっかり強化はしてくると思います。

カタールW杯のベストゲーム

すがや 僕にとってのベストゲームは、アルゼンチン対オランダですね。2-2でPK戦に突入して、最後はアルゼンチン代表が勝つんですけど、18枚のイエローカードが飛び交うなか、オランダ代表が最後にFKで追いついて……。オランダ代表のファン・ハール監督は、バルセロナを率いていたときにリケルメとの因縁があるから、そういった部分も含めて気になりました。

安藤 メッシ(パリ・サンジェルマン)がゴール決めたときに見せた、リケルメポーズ(両手を耳の横に当てる)には痺れました。

すがや メッシはバルセロナのカンテラ出身ですものね。自国のスター選手のリケルメが、不遇の扱いを受けていた時代を知っていたでしょうし。

安藤 僕のベストゲームは、カタールW杯の決勝ですね。取材をしてきた27年間で、チャンピオンズリーグやEUROの試合、学生の頃にはフランスW杯の決勝も見ましたけど、間違いなく僕の人生で最高の試合でした。

すがや マラドーナがいた1986年、メキシコW杯以来のアルゼンチン優勝ですもんね。「マラドーナを超えられるかもしれない唯一の選手」と言われたメッシが、W杯を手にするまでは、長い時間かかりましたよね。

安藤 前半はアルゼンチンが2対0で折り返して、ここまできたらメッシのいるアルゼンチンが優勝するんだろうな……と思っていたんですけど。

すがや 準決勝までは調子が良かったフランスが、決勝ではあまりコンディションが良くなくて、見るからに動きが重かったですよね。

安藤 チーム内に風邪が蔓延していて、コンディションが悪い。しかもポグバ(ユヴェントス)、ベンゼマ(レアル・マドリード)、エンクンク(ライプツィヒ)もいない。

正直、決勝の前半戦はあまり見どころがなくて「アルゼンチンが勝って、メッシがW杯を手にするシナリオで納得する試合」という感じだったんですけど。後半は“キツそう”に見えたフランス代表が、徐々に勢いを取り戻して、エムバペ(パリ・サンジェルマン)の2得点で追いついたあたりから、スタジアムの空気が壊れていくような感じがありましたね。

すがや 会場にはアルゼンチン人のサポーターが、たくさん押しかけていましたよね。

安藤 そうですね。フランスが追いついたあたりから、僕も含めたスタジアムにいた全員が、“バグっていくような感覚”があって、延長戦になって、その異様な空気はさらに増大していきました。

すがや そして延長戦に入り、メッシが108分に得点を決めました。

安藤 異様な空気のなかでメッシがゴールを決めて、“これ以上ない素晴らしいエンディングだな”と思ったんですけど……。

すがや エムバペがハットトリックとなるゴールを決めて(118分)、歓喜のムードに冷や水をぶっかけるんですよね。

 安藤 エムバペがゴールを決めたとき、スタジアムが静まり返ったんですよ。その様子を見て、ゾクゾクするような感覚があって。

すがや すごかったですよね。世界的スターのメッシに次世代スターのエムバペに追いすがる、というストーリーを含めても、W杯で歴代1位の試合かもしれませんよね。

安藤 間違いないですね。PK戦が終わったときには、僕も魂が抜けていくような感覚になっていて。“決勝戦が終わってほしくない”という気持ちで、涙が出てきたんですよ。

すがや そうなりますよね。W杯トロフィーを掲げるメッシの姿をご覧になられたときは、どんな感じでした?

安藤 いや、それはもう、涙腺崩壊ですよ……。10番を広めたマラドーナと、その失いかけた10番像の権威を取り戻したメッシ。そのメッシがトロフィーを掲げてはしゃいでいる姿を見て、“神様はいるかもしれない”と人生で初めて思いましたから。

▲メッシがトロフィーを掲げた瞬間の気持ちを語ってくれた安藤氏