現地でしか味わえないW杯の魅力とは?

すがや 僕はグループリーグの試合を見に行ったんですけど、初出場国や久々に本大会に戻ってきた国々の試合は、サポーターの熱量も高くて面白いですよね。2018ロシアW杯のモロッコ代表とか今回のカナダ代表とかは、この大会に懸ける熱量が凄まじいものがあったから、試合内容とはまた違ったW杯の魅力が詰まっていました。

安藤 たしかに、そういう国のサポーターは燃えていますよね。W杯は、4年に1度しかないですし、街の盛り上がりとかも全然違う。まさに「祭り」そのものなんですよね。すでに敗退が決まっていたカメルーン代表も、3戦目でブラジル代表に勝って(1対0)、20年ぶりの歴史的な勝利で盛り上がっていましたから。

すがや あとは現地で世界各国のサポーターと話すのも楽しいですね。「日本は4年に1度出られるだろう?  俺たちは36年ぶりなんだぞ!」とペルー人に言われたり。

安藤 僕も「知っているか?  俺ら出てないんだぜ」とイタリア人に言われました(笑)。

すがや しかも、2大会連続で出られていない……。海外のサポーターは「他の国を煽る歌」のレパートリーも持っているじゃないですか。出場していないイタリアの歌を歌っているサポーターを、カタールでも見かけましたし。

ロストフでベルギーに敗れたロシア大会でも「俺たちも6大会連続ベスト16で負けているから、気持ちはわかるよ」みたいなことをメキシコ人に言われたなぁ。

安藤 メキシコのサポーターは楽しいですよね。

すがや 有名な選手はあまりいないけど、組織力のあるサッカーをして、大会を盛り上げる存在だったりするところとか。日本とメキシコは共通点が多いので、親近感が湧きますよね。

安藤 メキシコのサポーターが集まって、みんなで騒いでいる様子を見ていると、人生を謳歌している感じがして、すごく羨ましいですよね。僕も高校2年生でアメリカ大会、大学3年生でフランス大会を観戦して、いろいろな価値観が変わりましたから。もし、まだW杯を見たことがないという方には、人生で一度くらいは現地観戦を体験してもらいたいなと思います。

すがや そうですね。それで少しずつでも、ゴール裏にいる日本人の数が増えていくといいですよね。

2026北中米ワールドカップに向けて

すがや 2026年の北中米W杯に向けて、代表チームも再始動しているわけですけど、安藤さんが日本代表に期待していることは何かありますか?

 安藤 やっぱり10代の選手が出てきて、代表でも活躍してほしいと思うんですよ。五輪代表も大切ですけど、A代表に入る主力選手がいなくてもメダルが取れるような状況を作らないと、さらに上のレベルにはいけないような気がするんです。

すがや たしかに。わざわざ五輪向けに、あそこまでチーム作りをするのは世界的に見ても日本くらいかもしれないですね。どの国も大体は戦術皆無か国に根付いているサッカーを即席チームでやるかですし。

安藤 育成世代が強化されていかないと、将来の飛躍にはつながらないと思ってます。

すがや 安藤さんは、2026年もW杯を取材されますか?

安藤 ぜひ、行きたいですね。サッカーライターの友人から「一度W杯の取材に行くとハマるよ」と言われて、その言葉の意味が今になってよくわかりました。

W杯は、普段はサッカーと馴染みが薄い方にも、試合を見ていただける貴重な機会です。多くの人に試合を楽しんでもらうためには、選手が歩んできた魅力的な物語を提示できるかが大切だと思っているので、僕はこれからも取材を通して、日本代表の更なる飛躍や若手選手が活躍につながる環境を作っていきたいですね。

▲安藤氏の著書『ドーハの歓喜』を手に記念撮影

すがや 大会前になると「日本が勝てるわけない」と声高に言う人がいますけど、僕は北中米W杯でも「日本はドイツとスペインに勝てたから、どこのチームにも勝てる可能性がある」と言い続けたいと思っているんです。今から2026年が待ち遠しいです!