天狗マネージャーが芸人を殺す?
芸人が「どうしてもやりたくない」と思った仕事を、相手にカドを立てずに断るのもマネージャーの仕事のひとつだ。これも本当にありがたい。「事務所がNGなんで」「マネージャーがNGと言ってて」と言えば、それが断る立派な理由になる。
当然、その分の手数料はギャラから引かれる。フリーだとギャラは全部そのまま貰えるが、それらのリスクや手間を全部自分で背負わなくてはならない。どちらにもメリット、デメリットがある。
よく芸人が売れると天狗になると言うが、マネージャーだって天狗になることもある。たとえば、売れっ子タレントを担当しているマネージャーに嫌われると、そのタレントを使わせてもらえないから、機嫌を損ねないように、あるいは嫌われないように業界の人がヘコヘコすることがある。
そうなるとマネージャーも勘違いをする。「そんな仕事うちの〇〇にはやらせられない」「もっとギャラ上げないと動かせない」など、言ってることは間違いないのだろうが、上から目線で相手に接するようになり、業界の人から敬遠されるようになる。そのうち、タレントの評判まで悪くなり、結果的に仕事が減ってしまうこともある。
事務所、マネージャー、タレントは持ちつ持たれつの関係だ。どの立場にも上下はないと思っている。3者でしっかりと手を組んで、売れるために同じ方向を向いているのがいい関係だと思う。
これまで、自分が売れないことを事務所やマネージャーのせいにしている芸人を山ほど見てきた。全ては自分の実力なのだが、そうは思いたくないから事務所のせい、マネージャーのせいにするのだ。
大事なのはタレント自身が、マネージャーが売りたくなるような実力と魅力を身につけること。そうしたら、事務所もマネージャーもどんどん売り出してくれる。
うまくいく時は周りの人のおかげ、うまくいかない時は自分のせい。俺の周りの売れた人は、みんなその謙虚さを持っている。
俺もその心がけだけは忘れないようにしたい。たとえ死ぬまで売れなくても、中身だけはずっと一流でいたい。そう思っている。
(構成:キンマサタカ)