あの技がすごいと言われても自覚ない

――でも、それが今につながっているんですよね。

テツ 最初は僕もトモも「え、芸人??」ってなったんですけど、「売れたら歌もできるよ」と言われて「じゃあ、やってみる?」って感じでした。

――芸人になるつもりなかったということでしたが、最初は戸惑いみたいなものはなかったんですか?

テツ めっちゃありましたね。浅井企画さんのお笑いライブに出るためのオーディションでコントをやったら、審査する作家さんに「それコントじゃないよ。お芝居だよ」って言われて。二人とも演劇学科なんで、コントとお芝居の何がどう違うのかがわかんなかったんです。漫才の台本を作ってやってみるんですけど、なんかしっくりこない。どうやっていいのかわかんなくて、戸惑いばっかりでした。

――この人のスタイルを参考にした、とかってありましたか?

トモ 誰々みたいな形をしてみよう、というのはなかったですね。ただ、コント1本、漫才1本やったんですけど、どちらもしっくりこなかったので。もともとテツは歌手志望ということもありギターを持ってました。歌ネタをやって好きな歌を歌って、それでダメだったらやめようという軽い気持ちでした。それが……テツはギター持ってるのに弾けないっていうんです。

テツ 今でも使ってるギターなんですけど、僕、中学の頃にのど自慢番組に出て。それでもらった賞金で自分で買った3万円のギターなんですけど。それを今も使ってます。

トモ それはイベントなどで使っていて、今日のこのギターは、さだまさしさんにいただいたものなんですよ(笑)。

テツ 自慢っぽく言ってる(笑)。

トモ 当時、僕はギターを持ってませんでした。遊びに行った友達の家にギターがあり、弾き方を教えてもらったことがあって。それで少しだけ弾けたんです。テツは弾けないので、僕がテツのギターを借りて弾くことになりました。僕はギター演奏、テツが全部歌うというネタをやり始めたんです。

テツ 最初は、五木ひろしさんのようになりたいなと思っていて。五木ひろしさんって、どんな楽器でも弾けるんです。で、お芝居もやられてて。そういうのに憧れて演劇学科に入ったし、そういうのを目指してたんです。ただ、ギターはFっていうコードがあるじゃないですか、あれがもう押さえられなくて、すぐやめちゃって(笑)。

でも、東京に出てくるときに“部屋にギターがあったらモテるかな”とか、ちょっとした下心みたいなのがあって(笑)。弾けないんですけど、部屋にはずっと置いてあったんです。

――ミュージシャンの方からも「トモさんのギターは本当にうまい」って聞きますよ。

トモ え、ありがとうございます! でも、ギターは素人ですよ。一度も習ったこともなくて、今でも独学でやってます。

――これまでもずっとですか?

トモ はい。ギター弾きながらぐるぐる回ったらおもしろいなとか、いろいろやってたら、ネットには「トモがやってる、なんとかのなんとかっていう技がすごい」みたいに書かれてて。その“なんとか”っていう技自体よくわかんないんです(笑)。

――あはははは!

トモ あと僕、ピックを使えないんです。たぶん、ピックで弾けなくて指で弾いてるから、そういう技をしやすいんじゃないかな。よくわからないんですけど(笑)。

▲トモのギターが独学だということに驚いた

芸人を始めて3か月でできた「なんでだろう」

――ちなみに、「なんでだろう」ができたのって、結成されて何年目ぐらいですか?

トモ それが……3ヵ月目です(笑)。

――はやっ!(笑)

トモ (笑)。コンビ結成は1998年の2月です。浅井企画さんのライブに初めて出させていただいたのが2月だったのでそうしてます。その前年の秋に結婚披露宴に出席したんですね。その後すぐ声をかけてもらいましたが、2ヵ月間ぐらいは「お笑いはできません」と断っていました。二人でやったこともなかったし、テツも「無理」という感じでした。じつは僕、吉本さんにお世話になったことがあったんです、若い頃に。

テツ 僕はそれを見てました。

トモ 新喜劇のようなことを東京でもやりたい、みたいな企画だったんです。“あ、新喜劇だったら芝居だし楽しそうだな”と思って、オーディションに行ったら受かったので、2年ぐらいお世話になりました。

そのときお芝居を一緒にやっていたのが、当時はTEAM-0というコンビだった、(山崎)邦正さんと軌保さん。あとは極楽とんぼさんやココリコさんもいました。共演させていただきながら、“この人たちすごい、僕はかなわない”と思ってました。

テツ だから、あの世代の人は歳も同じぐらいですね。

トモ そのあとも、とにかくすごいメンバーが次から次へと入ってこられて。僕の実力では “お笑いの世界で成功するのは無理”と思ってやめたんです。だから、また戻るつもりはなかったし、テツも芸人をやる気はなかったようです。

――いやいや(笑)。

トモ とにかく当時は、二人で芸人になろうとは微塵も考えてませんでした。声をかけていただいたのにずっと断っていたのですが、もし売れたらCDを出せるとか、ドラマや舞台に出られるとか、言い方は悪いですがしつこく誘い続けてくださり……。

――ずっと口説かれたんですか?

トモ はい、2ヵ月ずっと。だから「じゃあ、ちょっとだけ」と言って始めたんです。