「食べすぎ」が国や文明を滅ぼしていた
大げさに聞こえるかもしれませんが、古代エジプト、古代ギリシャ、古代ローマ帝国が栄華を極めた時、突如として衰亡していった要因の1つに「食べすぎ病」が挙げられています。
こうした文明や帝国を築くまで、人々の暮らしは粗食で、よく働き、時には戦争に参加するなど、肉体を大いに動かすことで健康を保っていました。しかし、文明・帝国を築いた後は怠惰になり、とくに貴族階級の人々は、美食・飽食のかぎりを尽くすようになりました。その結果、「食べすぎ病=さまざまな病気」が蔓延し、文明・帝国が滅んでいったのです。
ローマの貴族は毎日宴会を楽しんでいました。しかも1日数回催されていた宴会をハシゴするために、満腹になった後は、鳥の羽根で喉をくすぐって嘔吐を促し、次の宴会に向かったというエピソードまで残っています。ちなみに、夕方から夜にかけて開かれる宴会(主賓)は3つのコースに分かれていました。
ワインと共に、卵、オリーブの実、腸詰めを食べる。
第2:ケーナ・プリーマ(メイン料理)
魚、鳥肉、獣肉を主とした料理。とくに豚、猪、兎の肉の他、牡蠣、ウニや豚の乳房や子宮などが珍重された。
第3:ケーナ・セクンダ(デザート)
リンゴ、ザクロ、ナツメなどの果実と、小麦粉をミルクと油でこね、それを焼いて、ハチミツをかけて食べる。
こうした食事での宴会を夕方から夜にかけて2~3回繰り返していたというのですからあきれます。古代ローマ帝国のローマでは疫病(ペスト)が流行しました。のちの東ローマ帝国では住民の半数が死亡したと言われています。
ペストといえば紀元前430年にアテネで流行した病気Plague of Athen(アテネの疫病)は発疹チフス説、ハシカ説、痘瘡説などさまざまですが、ペスト説が一番有力です。10万人のアテネの人口のうちの4分の1(2万5000人)の命が病気で失われ、古代ギリシャは急速に衰退していきました。
「親が子の葬式をだす」は悲劇
では、現在の日本はどうでしょうか? 男と女の平均寿命がそれぞれ約81歳、87歳で、世界最長寿国の1つとされています。
2019年9月の時点で、100歳以上の人口は7万1274人。2019年9月現在の最長寿者は116歳の田中カ子さんです。一方、惜しくも病気で早世された著名人のリストを見ると、2015~2019年の数年間で、「55歳」以下の多くの有名人が“若死に”しています。しかも、ガンによる死亡が目立ちます。
こうしてみると、一般の方々でも多くの人が“若死に”しているのは、想像に難くありません。男女合わせた平均寿命を85歳とするなら、1世代=30年と考えると、「85歳−30歳=55歳」となります。
ということは、55歳以下で亡くなった人の親は存命していることも多く、「親が子の葬式をだす」という「逆さ仏(逆縁)」の現象があちこちで起こっているということです。私にはそれが食べすぎ病で国が滅ぶにいたる「足音」のように思えてなりません。