ゲームのお仕事はなんでもやります!(笑)

――山本さんが最近読んで面白かった漫画はありますか。

山本 私の友達・ごめたん先生が描いた『39歳の免許合宿』(ワニブックス)です。初めて漫画を描いて、あれは天才ですよね。39歳のおじさん2人が免許を取りに行くっていうテーマの作品なんですが、脇役として私も出ています。

――山本さんは漫画家として先輩ですが、どの辺りが面白いと感じましたか。

山本 まず絵にめちゃめちゃ味があって、しかも似てる(笑)。ちゃんとフリがあってオチがあって、やっぱ芸人さんだな〜と思いました。オチをつけるのって難しくて、描きたいこと描いていたら、オチがなかったとかあるんですよ。ごめたん先生はそこらへんが最初からできていると感じました。

――イヤなこととか恥ずかしいことって、無意識的に自分の中に押し込めてしまうことが多いように思います。最初からできたことなんでしょうか。

山本 たぶん、ごめたん先生もそうなのですが、もともとそういうのが得意なんだと思います。『この町ではひとり』(小学館)は、私の人生で一番ツラかったときのことを描いた漫画なのですが、ツラいことって、描くことで昇華されるんです。私なりの発散方法でもありますね。

――家では漫画を描く時間と、あとは山本さんが好きなゲームをする時間。それ以外の時間は何をしていますか?

山本 本当にそれしかしないんです(笑)。私の仕事は家でできるので、通勤の時間もないじゃないですか。そういった時間をすべてゲームに注ぎ込んでいます(笑)。作画して、ゲームして、作画して、ゲームして……っていう。

――ゲーム系のお仕事は今後も広げていく予定ですか?

山本 ゲームのお仕事、なんでもやります!(笑) 今はゼルダをプレイしていますが、私、ちゃんぽんゲーマーで。3~4本を一気に進めてしまうんです。昨日プレイしていたのは、ラジオDJが殺人事件を解決していくっていう設定の、まだ発売したばかりのゲームです。1本だけだと疲れちゃうんですよ。甘いものとしょっぱいものを交互に食べれば、永遠に食べられるみたいなことです(笑)。

自分の感覚をアップデートすることが大事

――エッセイ漫画家を目指す人にメッセージをお願いします。

山本 時代の流れに乗るのもすごく大切だと思います。セクハラとかパワハラとかもそうですし、10〜20年前は当たり前だったことも今はダメだったりする。移り変わっていく時代をインプットしていく感覚をもっておくべきだと思います。エッセイ漫画って、その人が考えていることが出ちゃうものですし、そういうのにはみんなすごく敏感。たとえば、フェミニストになる必要はないけど、フェミニストの人がどういうことを嫌うかっていうのはわかっていないといけないと思います。

――感覚のアップデートはどのようにしてますか?

山本 今、インターネットがなくてテレビだけ見ている人って、たぶんそこまで最新の状態じゃないかもしれない。SNSとかをチェックしていると、“え、こんなことで怒るの?”みたいなことも多いですよね。学校とかじゃ教えてくれない感覚で、これも勉強になるような気がします。あとは、自分で拾いきれないところを、周りの人たちと飲み会で話すとか。いろんな世代の話を聞いて勉強していく感覚がすごく大事だと思います。

――次の目標は明確になっていますか?

山本 そろそろフィクションとは向き合わなきゃいけないなと思っています。どこかでちゃんとやらないと、頑張らないと、という感じです。あとは、人に対して興味があるので……老後はスナックとかやりたいですね。昨日も夜中に卵焼きを作って食べて、“私、スナック出せるな”と思っていました(笑)。

――もう練習が始まっているんですね(笑)。

山本 はい、やりたいんですよね。ちっちゃいカウンター5席くらいのお店で……すごく楽しそう。老後の密かな夢です。

(取材:萌映)


プロフィール
 
山本 さほ(やまもと・さほ)
1985年生まれ。幼少時代からの親友「岡崎さん」との友情や子供時代の思い出を描いた自伝的作品『岡崎に捧ぐ』をウェブサイト「note」に掲載し、大きな話題になる。その後、現在、『この町ではひとり』(ビッグコミックスペリオール)、『無慈悲な8bit』(週刊ファミ通)連載中。2015年より『ビッグコミックスペリオール』で『岡崎に捧ぐ』の連載を開始。2018年、同作は単行本5巻で完結した。Twitter:@sahoobb、Instagram:@saho_yamamoto